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腎領域における大規模データを用いた医薬品安全対策について

No.5069 (2021年06月19日発行) P.49

田中基嗣 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構 新薬審査第一部)

岩上将夫 (筑波大学医学医療系ヘルスサービス リサーチ分野)

登録日: 2021-06-17

最終更新日: 2021-06-16

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  • 大規模な疫学データの有意義な活用法のひとつに医薬品安全対策が挙げられます。腎領域における大規模データを用いた医薬品安全対策の現状と課題について教えて下さい。
    筑波大学・岩上将夫先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    田中基嗣 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 新薬審査第一部


    【回答】

     【AKIのリスク分析などで活用。今後わが国のデータベースの活躍にも期待】

    (1)腎領域において医薬品の安全性が問題になる2つのパターン

    腎領域において,医薬品の安全性が問題になるパターンは,大きく2つにわけられます。①ある薬剤の副作用として急性の(あるいは慢性の)腎機能低下が起きる場合,②ある薬剤を慢性腎臓病患者や透析患者に使用した結果,その薬剤の既知の(あるいは未知)の副作用が顕著に出る場合,です。

    ①副作用として急性(または慢性)の腎機能低下が起きる場合

    急性の腎機能低下を起こす可能性がある薬剤としては,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs),利尿薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme inhibitor:ACEI),アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensin Ⅱ receptor blocker:ARB)などが挙げられます。これらの薬を同時に処方したときに特に急性腎障害(acute kidney injury:AKI)のリスクが高まる可能性が,英国の大規模プライマリケアデータベースを用いた研究で示唆されています1)

    また,多くのカルシウム拮抗薬は肝臓の酵素であるシトクロムP450 3A4(CYP3A4)によって代謝されることから,CYP3A4阻害作用がある抗菌薬クラリスロマイシンと同時に処方すると,(カルシウム拮抗薬の血中濃度上昇による)低血圧によってAKIのリスクが高まる可能性が,カナダの大規模データベースを用いた研究で示唆されています2)

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