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肝外胆管癌[私の治療]

No.5067 (2021年06月05日発行) P.37

三輪武史 (富山大学学術研究部医学系消化器・腫瘍・総合外科)

藤井 努 (富山大学学術研究部医学系消化器・腫瘍・総合外科教授)

登録日: 2021-06-04

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  • 肝外胆管は胆囊,胆囊管,十二指腸乳頭部を除く肝外胆道系を指し,同部に発生したがん腫を肝外胆管癌と呼ぶ。胆囊管合流部より肝側の肝門部領域胆管癌と,十二指腸側の遠位胆管癌に区分され,手術術式が異なる。膵・胆管合流異常や,一部の有機溶剤は肝外胆管癌の危険因子と考えられている。

    ▶診断のポイント

    肝外胆管癌の初発症状は90%が黄疸であり,ほかに体重減少,腹痛などがみられる。診断には造影CT検査を行い,胆管の壁肥厚や造影効果,狭窄所見から診断する。可能であればダイナミックCTが望ましく,胆道ドレナージ後は病変の評価が困難となるため,画像検査は胆道ドレナージ前に行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    肝外胆管癌の根治的治療は外科的切除であり,切除不能と判断された場合は化学療法や放射線治療および緩和治療を選択する。遠隔転移を伴う肝外胆管癌は切除不能である。局所進展についての切除可否はコンセンサスがなく,病変の範囲診断と患者の全身状態をもとに施設ごとに判断される。

    肝門部領域胆管癌では,葉切除以上の肝切除を伴う胆管切除が標準的であるが,術後肝不全のリスクが高いため,十分な残肝予備能が必要である。ICG試験や肝体積測定により残肝予備能を評価するが,不十分な場合は切除予定肝に経皮経肝門脈塞栓術を行い,残肝体積の肥大化を図る。十分な残肝予備能が確保できないと判断される場合は,切除不能となる。胆管内の腫瘍進展範囲によって肝切除の範囲が決定され,残存予定肝の胆道ドレナージが必要となるため,ドレナージ前に外科医師と十分協議する必要がある。遠位胆管癌では膵頭十二指腸切除術が標準的であるが,特に肝側の進展範囲については術前に十分評価する必要がある。

    切除不能肝外胆管癌の化学療法は,これまで標準的であったゲムシタビン+シスプラチン療法に加えて,「胆道癌診療ガイドライン第3版」でゲムシタビン+S-1(ティーエスワン®)療法,ゲムシタビン+シスプラチン+S-1併用療法が記載された。二次治療以降は標準的な治療は確立しておらず,S-1治療歴がなければS-1を含むレジメンを考慮する。高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)を有する固形がんに対して標準的化学療法後に増悪した場合,がん腫横断的にペムブロリズマブが適応となるため,上記レジメンが奏効しない場合はMSI検索を考慮する。

    術後補助化学療法には一般的に推奨されるレジメンは存在せず,わが国で保険適用となっているS-1やゲムシタビン,シスプラチンをベースにした化学療法を行う。放射線治療は有用性が示されておらず,緩和的治療などで限定的に適応となる。

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