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胆道閉鎖症[私の治療]

No.5064 (2021年05月15日発行) P.42

上野豪久 (大阪大学大学院医学系研究科小児成育外科学特任准教授)

登録日: 2021-05-18

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  • 新生児期〜乳児期に発症する,原因不明の炎症により肝外胆管が閉塞し肝臓から十二指腸への胆汁分泌の廃絶をきたす疾患である。外科的治療を行わなければ胆汁うっ滞から肝硬変へと至る。手術が早いほうが予後良好であることがわかっているため,早期に専門医への紹介が必要となる。

    ▶診断のポイント

    乳児早期に白色便が続いたときには速やかに専門医に紹介する。便色は必ずしも白色ではなく,薄い黄色の場合もある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    外科的治療が中心で,できるだけ早期に確定診断をつける必要がある。直接ビリルビン高値が持続するときは,十二指腸ゾンデ,胆道シンチを行う。十二指腸への胆汁排泄を認めないときは,術中胆道造影により確定診断をつける。

    治療の基本は,病型により肝門部空腸吻合術または肝管空腸吻合術を行う。手術を実施した後は,胆汁流出が良好であるか,不良であるかによって治療方針は異なる。胆汁流出が不良で黄疸が軽快しないもの,肝硬変に至った場合の治療は,肝移植術が良好な成績で行われている。胆汁流出が不良な場合は,脂肪吸収不良のため脂溶性ビタミン製剤を投与する。

    胆汁流出が良好で黄疸が軽快した症例については,できるだけ自己肝生存をめざす。黄疸がなくても,胆管の炎症が持続し肝の線維化が進行する。胆管炎を早めに治療し,肝の線維化が進行しないようにするのがポイントである。しかしながら,治療にもかかわらず肝の線維化が進行し,門脈圧亢進症を引き起こすことが多い。食道静脈瘤や脾腫を合併するのみならず,肝肺症候群,肺高血圧症など肝外病変を引き起こす例があるので,注意する。そのため,生涯にわたる超音波や上部消化管内視鏡など,定期的な経過観察が欠かせない。

    胆汁流出を促進し肝臓の線維化を防ぐ様々な薬剤が試みられているが,内科的治療でエビデンスが明らかなものは少ない。長期的にみても,最終的な治療は肝移植術となっている。

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