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スピリチュアルケア[私の治療]

No.5063 (2021年05月08日発行) P.64

二ノ坂保喜 (にのさかクリニック院長)

登録日: 2021-05-10

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  • ホスピス・緩和ケアに関わる医療者にとって,スピリチュアリティはとっつきにくいテーマだと言われる。ここではそれをあえて「生きがい」または「生きることの意味」と日本語訳して考えを進めてみたい。「生きがい」がスピリチュアリティのすべてをカバーするとは言いがたいが,かなりの部分で重なりを感じる。

    ▶スピリチュアリティとは?

    米国のホスピス・ケアをフィールドに,ソーシャルワーカーとして活躍し,将来を期待されながら,36歳で夭逝した服部洋一は遺稿の「生きられる死―米国ホスピスの実践とそこに埋め込まれた死生観の民族誌」1)で次のように述べる。
    「スピリチュアリティは,わが国のホスピスケアの入門書の鬼門となっている。しかし,その不可解さは,知識人が作った幻の壁である。同語は英語圏では日常語である。
    ……スピリチュアリティとは,「その人の生に意味をもたらすものごと」にほかならない。

    日本語に無理に訳そうとすると,「信念」「生きがい」「楽しみ」「喜び」「意地」「希望」「誇り」など,多くの言葉をまたいで重なってしまう。しかし,決して難しいことを指しているのではない」。
    そして続けて,「以上の言葉は,あくまでも『箱』であり,実際のスピリチュアリティは,その中に入る,もっと具体的で,個人的なものだということである。それが何であれ,その人にとっては特別で,その人の生を意味づけ,方針を与えるならば,それが,その人にとってのスピリチュアリティである」。

    要するに,一人ひとりにとっての生きる意味,生きている価値,文字通りの生きがいと考えていいだろう。そして,死を前にしたときに,生きがいの問題が鮮明に浮かび上がってくると考えられる。そこに医療関係者が何らかの形で関わる余地が生まれるが,必ずしも医療者の役割としてスピリチュアルケアが求められるわけではないし,ホスピス緩和ケアの専売特許でもないと言える。

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