顕微鏡的大腸炎(microscopic colitis:MC)とは,慢性下痢を主訴とし,炎症所見を病理組織学的には認めるが,内視鏡などでは認識しがたい大腸炎という意味であり,lymphocytic colitis(LC)とcollagenous colitis(CC)に大別される。病理組織学的には粘膜固有層に慢性炎症性細胞浸潤,上皮内リンパ球(intraepithelial lymphocytes:IEL)の増加(IEL≧7個/上皮100個),表層上皮の傷害(平坦化,剥離・消失)に加え,LCではIELの著明な増加(IEL≧20個/上皮100個),CCでは大腸上皮直下に厚い(≧10μm)膠原線維束(collagen band)を認める。中高年女性に多い。LCは欧米に多く,わが国ではきわめて稀である。わが国ではPPIやNSAIDsなどとの関連が疑われるCCが近年多く報告されている。
症状は慢性の水様性下痢を主徴とし,時に血便,腹痛,低蛋白血症,体重減少などを認める。内視鏡的に異常を認めないとされていたが,近年の経験の蓄積により,CCにおいては大腸粘膜の顆粒状粘膜,血管透見網異常,非常に長くて幅の狭い縦走潰瘍・線状溝または線状瘢痕,発赤,浮腫などの所見が特徴とされる。確定診断は生検で行う。
薬剤性の場合は休薬のみで改善するので,内服歴を詳細に聴取し,薬剤との関連が疑われる場合は被疑薬を中止する。下痢が改善しない場合は,下記の薬剤を試してみる。欧米では一手目として使用されることの多い陰イオン交換樹脂(コレスチラミンなど)1)はわが国では保険適用外であり,また,次硝酸ビスマス(ビスマス製剤)1)は長期連用により精神神経系障害や亜硝酸中毒(メトヘモグロビン血症など)をきたすことがあるので,慎重を要する。
残り1,081文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する