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白内障[私の治療]

No.5053 (2021年02月27日発行) P.46

黒坂大次郎 (岩手医科大学附属病院眼科学講座教授)

登録日: 2021-02-26

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  • 加齢に伴い80歳以上ではほぼ全例に生じる加齢白内障のほか,糖尿病やアトピー性皮膚炎など他の疾患や眼疾患に併発する併発白内障,乳幼児に生じる先天白内障がある。加齢白内障が最も多いが,アトピー性皮膚炎患者の約1割に白内障を生じ,若年者の白内障の主要な原因となっている。主な治療法である白内障手術は,わが国では年間100万件以上行われている。

    ▶診断のポイント

    散瞳して細隙灯顕微鏡で水晶体の混濁が認められれば白内障と診断する。細隙灯顕微鏡所見だけでは,加齢白内障と他の白内障との区別は明確にはできない。多くの場合,年齢や混濁形態,糖尿病などのコントロール状態,ステロイドの投与期間などを考慮し判定する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    加齢白内障では,視力低下などの自覚症状があり,何らかの不便がある場合には,外科的治療を検討する。多くの場合手術予後は良好であるが,術後眼内炎のように稀ではあるが,大幅に視力が低下する重篤な合併症があるため,不便がない場合には手術は行わない。その場合には,初期白内障に対しては,希望があれば,進行を遅らせる薬物による点眼治療を行う。手術を行わない場合,放置すると時に緑内障発作など重篤な合併症を生じるので,定期的な経過観察を行う。

    乳幼児期は早期に手術を行わないと弱視が形成され,手術を行っても良好な視機能が得られない場合があるので,疑われた時点で速やかに専門医に送り,必要があれば手術治療を行う。

    他の眼疾患に伴う白内障は,現病のコントロール状態を見きわめながら,コントロールのついた状態で手術治療を検討する。糖尿病のコントロールが不良の場合には,術後の感染のリスクが高まり,さらに黄斑浮腫を伴う場合には術後に悪化するリスクが高まる。アトピー性皮膚炎患者の場合には,眼瞼周囲の瘙痒がコントロールできていないと術後にこすり,創口離開や感染のリスクが高まる。

    アトピー性皮膚炎に伴う白内障など若年者の白内障は,白内障術後に視力は回復させられても,老視となり,新たな不便さを生じるため,術前にそのデメリットを説明し,納得が得られた場合に手術を行う。

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