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虫刺症[私の治療]

No.5051 (2021年02月13日発行) P.39

室田浩之 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野教授)

登録日: 2021-02-15

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  • 虫の刺咬に伴う毒物,または吸血の際に流入する虫の唾液腺由来物質で生じる化学的刺激,あるいはアレルギー反応で生じる皮膚炎である。その反応の強さには個人差がみられるものの,虫刺部に膨疹や紅斑を生じ,瘙痒あるいは疼痛を生じる。

    ▶診断のポイント

    患者自身が虫の刺咬を目撃している場合(寄生虫妄想の場合を除き)診断は容易である。その他,皮疹発生前の野外活動等に関する問診が参考になる。診察時は湿疹の局在と配列から診断を想起できる。たとえば,蚊の吸血に伴う小型の浮腫性紅斑は,主に露出部に互いに融合することなく散在する。ブユは小型のハエのような外観の吸血昆虫で,ブユ刺症は蚊と同様,露出部に好発する。ブユ刺症のかゆみは強く,結節性紅斑様の症状から慢性の経過をたどり,結節性痒疹様の表現型に移行する。皮膚表面を這うような虫(例:ダニ,アオバアリガタハネカクシ)は,虫の動線に沿って列序性に並ぶ皮疹や線状皮膚炎を形成する。毛虫皮膚炎は,チョウやガの幼虫の有毒毛に触れることで生じるアレルギー皮膚反応である。有毒毛に接触した付近を中心に小型の浮腫性紅斑,丘疹が集簇して生じるため,特徴的な臨床像を呈する。衣類の表面に付着した有毒毛が,脱衣の際に皮膚に接しても皮疹を生じるため,想像とは異なる部位に皮疹を認めることもある。皮疹の分布から判断する際は注意が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    ほとんどの虫刺症は慢性化することなく経過するが,強い瘙痒に対する搔破が皮疹を慢性化に導くことがある。そのため筆者は,少しでも早く症状を軽快させ,治療期間を短縮させることに主眼をおいて治療している。治療の主体はステロイド外用薬とし,比較的強めの薬剤を選択することで治療期間の短縮を図っている。この際,ステロイド外用薬の副作用に留意する。蚊やイエダニ等による虫刺症は治療開始後数日,長くても1週間以内には軽快する。消退後も漫然とステロイド外用薬を継続しないよう指導することが重要である。

    1週間後も皮疹が軽快しない場合は,後述する鑑別疾患をふまえ診断を再考する。ブユ刺症など痒疹に移行し慢性に経過する虫刺症では,ステロイド外用薬の単純塗布では効果が得られにくいため,ステロイド貼付薬(テープ剤)を用いる。症状が体の広範囲に及び,整容的問題や瘙痒による睡眠障害など日常生活,職場・学校での活動に支障をきたしている重症例では,短期間の全身ステロイド投与を検討する。開始量は背景疾患の有無や年齢を考慮して調節する。合併症のない成人重症例の場合,処方例としてプレドニゾロンの開始量を15~20mg/日とし,3日後には10mg/日,5日後以降に休薬する。瘙痒のコントロール目的に抗ヒスタミン薬の処方を検討することもある。

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