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未破裂脳動脈瘤におけるエビデンスから見る現在の治療選択肢は?

No.5051 (2021年02月13日発行) P.50

荒川芳輝 (京都大学医学部附属病院脳神経外科講師)

井上智弘 (NTT東日本関東病院脳神経外科部長)

登録日: 2021-02-12

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  • 未破裂脳動脈瘤においては,病態,自然歴,開頭術,血管内治療などの多くのエビデンスが年々蓄積されています。さらに,血管内治療のデバイスの進歩にもめまぐるしいものがあります。そうした中で,未破裂脳動脈瘤における現在の治療選択肢をどのように考えるべきでしょうか。
    NTT東日本関東病院・井上智弘先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    荒川芳輝 京都大学医学部附属病院脳神経外科講師


    【回答】

    【5~6mm以上の未破裂動脈瘤は予防的外科治療を検討すべきである】

    2012年にわが国における未破裂脳動脈瘤の自然歴,破裂率に関する大規模調査の結果が発表されました1)。5~6mm以上の大きさの未破裂動脈瘤は年率1%程度以上の破裂率を有すること,前交通動脈瘤は3~4mm程度の小さい瘤でも年率1%程度の破裂率を有すること,不整形の瘤や複数瘤を有する場合,破裂率が高くなることなどが明らかになりました。また,7mm以上では大きくなるほど破裂率が顕著に高くなる傾向も明らかになりました。破裂率が年1%であれば,くも膜下出血で予後不良となる可能性は約2/3と言われますので,年率0.6%程度ずつ,手足の麻痺や高次機能障害といった神経学的後遺症を負う危険性を積み重ねていくことになり,5年で3%の危険性になります。

    一方で,予防的に行う開頭脳動脈瘤クリッピング術でそのような後遺症を負う危険性は,熟練した術者の治療では3%以下ですので,5~6mm大の未破裂動脈瘤を有する患者が未破裂動脈瘤を取り除くことで明らかに5年以上健康に生活できることが予想される場合は,予防的手術を検討するほうがよろしいことになります。

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