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細菌性角膜炎[私の治療]

No.5040 (2020年11月28日発行) P.37

稲田紀子 (東松山市立市民病院眼科部長,日本大学医学部視覚科学系眼科学分野臨床准教授)

山上 聡 (日本大学医学部視覚科学系眼科分野主任教授)

登録日: 2020-11-27

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  • 細菌性角膜炎は,角膜の細菌感染により化膿性の角膜炎・角膜潰瘍または角膜膿瘍を生じる疾患である。細菌性角膜炎は,主にコンタクトレンズ(CL)装用と外傷が誘因となって発症し,主な原因菌はブドウ球菌属と緑膿菌である。診断と治療には,角膜病巣擦過物の塗抹検鏡,細菌分離培養検査などによる原因菌の同定を積極的に行い,検査結果に基づいた薬剤選択が必須である。

    ▶診断のポイント

    細菌性角膜炎の自覚症状では,発症初期からの眼痛が特徴的であり,ほかに充血,流涙,眼脂,霧視,視力低下を訴える。細菌性角膜炎の二大誘因はCL装用と外傷であり,誘因から原因菌が推定される場合があるため,患者背景や発症状況の十分な問診を行う。細菌性角膜炎の主な原因菌は,グラム陽性菌であるブドウ球菌属,肺炎球菌と,グラム陰性菌である緑膿菌,モラクセラ菌とが挙げられるが,特にブドウ球菌属と緑膿菌による角膜炎が多い。CL装用ではアカントアメーバや真菌,外傷では真菌による感染性角膜炎がみられることがあるため,鑑別診断が重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    細菌性角膜炎の他覚所見は,原因菌により異なった病巣を呈し,原因菌を推定することができるため,代表的な原因菌の臨床的特徴を把握しておく必要がある。ブドウ球菌属は,アレルギー性結膜炎やアトピー性角結膜炎などのアトピー素因を有する患者に発症することが多い。円形膿瘍で,周囲の角膜内細胞浸潤は軽度のことが多い。緑膿菌は,CL装用者に発症する細菌性角膜炎の主要な原因菌であり,小円形膿瘍から輪状膿瘍に進行する。発症初期から広範囲の強い角膜内細胞浸潤による,すりガラス様混濁と前房蓄膿を伴う虹彩毛様体炎を併発する。さらに,進行は速く,輪状膿瘍の中央部が菲薄化し穿孔するため,迅速な診断と治療が必要である。

    治療は,誘因や臨床所見から原因菌を推定して行う経験的治療(empiric治療)から開始する。empiric治療では,「感染性角膜炎診療ガイドライン(第2版)」に従って,ブドウ球菌属を含むグラム陽性菌が疑われた場合には,フルオロキノロン系,セフェム系抗菌薬を使用し,緑膿菌を含むグラム陰性菌が疑われた場合には,フルオロキノロン系,アミノグリコシド系抗菌薬を選択する。その際,抗菌点眼薬や眼軟膏の多種類同時使用は,個々の抗菌薬の治療効果判定が困難となり,薬剤毒性が出現する可能性が高くなるため,可能な限り作用機序の異なる抗菌薬を1~2種類選択して治療を開始することが望ましい。その後,原因菌が同定された時点で,原因菌に合わせた抗菌薬を選択する標的治療(definitive治療)に変更する。

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