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結膜下出血[私の治療]

No.5040 (2020年11月28日発行) P.36

稲田紀子 (東松山市立市民病院眼科部長,日本大学医学部視覚科学系眼科学分野臨床准教授)

登録日: 2020-11-27

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  • 結膜下出血は,球結膜血管の損傷により,球結膜下組織に血液が貯留した状態である。多くは自然発症であり,原因は不明である。そのほかに眼部手術,眼部打撲などの外傷,および急性出血性結膜炎に代表される感染性結膜炎などに伴って発症することがある。自然発症の場合は,通常片眼性であり,出血する血管や出血量によって貯留する部位や範囲が異なる。

    ▶診断のポイント

    球結膜下に血液が貯留することで,赤い絵の具で塗ったような血腫として観察される。自然発症の場合には,球結膜充血は伴わない。発症時に「針で刺したような」と表現される軽度の痛みや異物感を伴う場合もあるが,多くは無症状である。外傷や結膜炎に伴う結膜下出血では,球結膜充血がみられる。結膜充血を伴った結膜下出血を観察した場合には,結膜および強膜の炎症または損傷,角結膜上皮障害,虹彩炎などの有無を確認する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    自然発症あるいは眼手術に伴って発症した結膜下出血の治療は不要であり,貯留した血液量によるが1~3週間程度で自然吸収されて,瘢痕を残すことなく治癒する。ただし,同じ部位の結膜下出血が繰り返し起こる場合には,結膜弛緩症が原因になっている症例がある。弛緩した結膜が瞬目や眼球運動によって伸展と弛緩を繰り返し,“結膜がよれる”状況下で出血している可能性があれば,結膜弛緩症の手術(切除術,逢着法,焼灼法など)を施行する場合もある。

    結膜下に血腫が形成され,結膜が瞼裂外に膨瘤するような重症例では,比較的太い血管に損傷がある場合があり,結膜を切開した上で原因血管に対して焼灼等での止血を要することがある。また,両眼同時発症や高頻度に再発を繰り返す場合には,抗血小板薬や抗凝固薬の服用例や内科的基礎疾患を有する症例があるため,視力・視野障害を確認し,網膜出血の有無,頭蓋内病変の有無等の追加検査を検討する。

    眼部打撲や外傷の既往がある場合は,結膜裂傷または強膜裂傷の有無を確認する必要がある。結膜裂傷は,フルオレセイン生体染色検査で容易に観察可能である。強膜裂傷や強膜穿孔の場合には強い眼痛(時に眼球運動痛)を訴え,高度の結膜下出血により開瞼困難となる。結膜下出血で強膜の状態が確認しにくいときには,CT検査やMRI検査で眼球の状態を確認する。多少でも強膜の損傷が疑われる場合には,結膜下出血あるいは結膜裂傷部位を外科的に拡張して病巣を確認し,止血,縫合等の処置を行う。

    コクサッキーウイルスあるいはエンテロウイルス感染による急性出血性結膜炎は,球結膜充血と結膜下出血を特徴とする結膜炎である。また,アデノウイルス感染症である流行性角結膜炎や淋菌結膜炎に代表される化膿性結膜炎を呈する重篤な感染性結膜炎では,結膜下出血を併発する場合がある。瞼結膜の充血の程度,濾胞形成,乳頭増殖,偽膜の有無などを確認し,原因微生物の検索をするとともに,それぞれの感染性結膜炎に対する治療を開始する。

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