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切除不能膵癌に対するconversion surgeryの適応について

No.5038 (2020年11月14日発行) P.52

髙橋秀典  (大阪国際がんセンター消化器外科膵臓外科長)

阪本良弘  (杏林大学医学部付属病院肝胆膵外科 診療科長・教授)

登録日: 2020-11-12

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  • 内科的治療が著効した症例に対するconversion surgeryは世界的に広まっており,良好な治療成績も報告されています。我々も積極的にconversion surgeryを行っていますが,非常に有効であった症例がある一方で,術後早期再発をきたす症例もしばしば認められ,反省の毎日です。conversion surgeryを真にメリットのある治療とするためには,どのような考え方・適応で行えばよいかをご教示下さい。杏林大学・阪本良弘先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    髙橋秀典 大阪国際がんセンター消化器外科膵臓外科長


    【回答】

    【術前化学療法を8カ月以上施行できた症例,tumor markerの十分低下した症例などが候補として挙げられる】

    膵癌の外科切除は困難で,診断時に切除可能な割合は15~20%にすぎず,局所進行を理由に切除不能(UR-LA)となる割合が約40%,遠隔転移を理由に切除不能(UR-M)となる割合が35%です。

    切除不能(unresectable:UR)膵癌に対して化学療法後に切除する試みがconversion surgery(CS)です。CSの報告は2000年代からあるものの,本格化したのはFOLFIRINOXやゲムシタビン+nab- paclitaxel(GnP)による新規化学療法が2011年以降に登場してからです。例を挙げると,ハイデルベルク大学でFOLFIRINOXを中心に化学療法(化療)を加えたUR-LA患者575例の切除率は61%,生存期間の中央値は15.3カ月(非CS例は8.5カ月)だったという報告があります1)。また,Johns Hopkins大学では,4カ月以上化療を継続した116例のUR-LA患者の72%にCSを施行し,生存期間の中央値は約35カ月(非CS例は約16カ月)でした2)。一方,イタリアで行った前向き登録では,6割のUR-LA患者を含む680症例のCS率は約9%にすぎませんでした3)。このように,欧米の化療後のCSの結果には大きなばらつきがあります。これは,治療対象がUR-LAのみならず,切除可能境界(borderline resectable:BR)やUR-Mを含み多様であること,施設間の切除適応の違いなどに起因していると思います。

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