株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

心房粗動[私の治療]

No.5033 (2020年10月10日発行) P.36

里見和浩 (東京医科大学病院循環器内科准教授)

登録日: 2020-10-08

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 典型的な通常型心房粗動は,心電図上鋸歯状波を示し,三尖弁輪周囲を旋回するリエントリー回路を有する心房性頻拍である。心房細動アブレーション後に出現し,異なる回路を持つ頻拍も,非通常型心房粗動として最近増加しつつある。

    ▶診断のポイント

    心電図でⅡ,Ⅲ,aVFにおいて鋸歯状波を有すれば,通常型心房粗動と診断できる。三尖弁輪を反時計回りに旋回するリエントリー回路を持つ。三尖弁輪を時計回りに旋回するものや,僧帽弁輪など左房に回路を持つものは,心電図診断で鑑別され,非通常型心房粗動とすることが多い。心房細動の合併例や,心房細動に対する薬物治療後に発生することも多い。心房細動の有無をホルター心電図で確認することが望ましい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    合併症である心原性血栓塞栓症の予防と,心房粗動そのものへの治療の2つの面から考えていく。

    心房粗動による血栓塞栓症のリスクは,心房細動と同等と言われており,心房細動と同様,CHADS2スコア,もしくはCHA2DS2-VAScスコアに基づいて抗凝固療法を行う。ただし,心房細動に広く使用されている直接経口抗凝固薬(DOAC)は,心房粗動には保険適用がない。

    次に,洞調律に回復させるのか(リズムコントロール),心房粗動の停止をめざさず心拍数を抑えるのか(心拍数コントロール)を検討する。治療方針は,心電図波形にはよらない。急ぎ停止を考える必要があるのは,次の3つの場合である。①症状が強い,②心不全を合併している,③低心機能例で血行動態を維持できない。この3つの要素がなければ軽症であり,心拍数コントロールで経過観察が可能である。心拍数コントロールを行う場合には,Ca拮抗薬,β遮断薬,ジギタリスのいずれかを選択する。通常型心房粗動に対しては,アブレーション成績は90%を超えることから,長期的にはアブレーションを検討する。

    洞調律回復が望ましい場合,心房粗動に対する抗不整脈薬による停止効果は高くなく,むやみに薬剤を増量しても無効であるばかりか,心不全増悪などをまねくこともある。血行動態の維持が困難な重症例で,心拍数コントロールが難しければ,急ぎ電気ショックによる停止を試みる。3週間以上の抗凝固療法が行われていない場合には,経食道心エコーで血栓の有無を確認することが望ましい。再発する場合には,専門施設に紹介の上,アブレーションを検討する。

    薬剤により頻拍が停止した際に,洞停止や洞徐脈になることがある。ふらつきや失神を認めたら,内服を中止し,来院するように患者に伝えておく。また,活動性の出血がある場合は,抗凝固療法は禁忌である。詳細な病歴聴取が必要である。顕在性WPW症候群が合併している場合,房室結節を抑制する薬剤は無効であり,使用すべきでない。

    残り989文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top