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膵癌により既存糖尿病のコントロール悪化や新規糖尿病発症をきたす機序は?

No.5033 (2020年10月10日発行) P.50

大橋 健  (国立がん研究センター中央病院 総合内科科長)

正宗 淳  (東北大学大学院医学系研究科消化器病態学 教授)

登録日: 2020-10-07

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  • 糖尿病の悪化や新規発症は膵癌診断の重要な契機となります。膵癌によって血糖値上昇をきたす機序について,最近の知見をご教示下さい。
    東北大学・正宗 淳先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    大橋 健 国立がん研究センター中央病院 総合内科科長


    【回答】

     【膵癌由来のエクソソームなどによるparaneoplastic syndromeと考えられる】

    日本では,5%程度の膵癌が,糖尿病の増悪あるいは新規発症を契機に診断されます。88研究のメタ解析によると,糖尿病患者における膵癌リスクは,糖尿病罹患期間が1年未満では6.69倍と最も高く,罹病期間が長くなると低下しており,膵癌による糖尿病発症が示唆されています。膵癌による膵実質の荒廃は,膵β細胞の減少や機能低下をもたらし,血糖コントロールの悪化につながります。しかし,膵癌診断の3年前という画像上膵癌が同定困難な時期から耐糖能異常が生じているとの報告や,膵癌切除後に糖尿病が改善する例が少なからず認められることから,膵癌による直接的な耐糖能への影響,すなわちparaneoplastic syndromeとしての糖尿病とすると考えやすいです。

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