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肝硬変[私の治療]

No.5027 (2020年08月29日発行) P.42

黒崎雅之 (武蔵野赤十字病院副院長・消化器科部長)

登録日: 2020-08-28

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  • 肝硬変は長期にわたる慢性肝疾患の終末像であり,その原因は2018年の全国調査によると12%がB型肝炎,49%がC型肝炎,19%がアルコール性,6%が非アルコール性脂肪性肝疾患である。肝硬変の中でも,黄疸,腹水,浮腫,肝性脳症,食道・胃静脈瘤出血,特発性細菌性腹膜炎などの肝機能低下に伴う症状がないものを代償性肝硬変,症状があるものを非代償性肝硬変と分類する。

    ▶診断のポイント

    代償性肝硬変は特異的な症状がないため,血液検査結果だけではなく,症状,身体所見により診断する。血液検査で肝障害を有する患者,あるいは肝硬変の主たる原因であるB型肝炎,C型肝炎,アルコール性肝障害,非アルコール性脂肪肝炎の患者においては,肝線維化を把握する検査として腹部超音波,CT,MRIなどの画像検査を行う。簡便な肝線維化マーカーとしては,FIB-4 indexやM2BPGiがある。非代償性肝硬変の診断は,肝不全に基づく症状や身体所見により診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    肝硬変の原因疾患に対する治療を行う。B型肝炎,C型肝炎に対しては抗ウイルス治療,アルコール性肝障害に対しては禁酒指導,非アルコール性脂肪性肝疾患では食事・運動療法や合併疾患(糖尿病,高血圧,脂質異常症等)の管理を行う。日本消化器病学会の「肝硬変診療ガイドライン2015(改訂第2版)」1)に,肝硬変の診断,栄養療法,腹水診断,腹水治療がフローチャート形式で示されている[https://www.jsge.or.jp/files/uploads/kankohen2_re.pdf]。身体障害者福祉法における肝臓機能障害(身体障害者手帳)の認定基準に該当する場合には申請する。

    症状の原因となる病態の基本は,肝細胞機能の低下,門脈圧亢進症,低栄養状態である。蛋白合成能が低下すると,腹水や浮腫の原因となる。門脈圧亢進症は肝性脳症の発症や食道・胃静脈瘤形成の原因となる。自施設で内視鏡検査が施行できない場合には,食道静脈瘤の確認のために専門医への紹介を検討する。

    非代償性肝硬変に対する肝移植は保険適用となっているため,65歳以下では専門施設へのコンサルトも検討する。脳死肝移植の適応基準は,Child-Pugh分類Cであり,肝細胞癌を合併している場合には,腫瘍径5cm以内かつ腫瘍個数5個以内かつAFP 500ng/mL以下(5-5-500基準)を満たす症例に限られる。アルコール性肝硬変の場合には,18カ月の禁酒を確認することが条件となる。

    肝硬変では,ビブリオ菌に汚染された食物により敗血症になる危険性があるため,生魚,生肉の摂取には注意が必要であることを指導する。

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