株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

消化管粘膜下腫瘍(GIST等)[私の治療]

No.5027 (2020年08月29日発行) P.41

炭山和毅 (東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座教授)

登録日: 2020-08-28

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 消化管粘膜下腫瘍は,粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜等に主座を置く占拠性病変の総称であり,消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)に代表される腫瘍性病変のほか,非腫瘍性病変が含まれる。わが国の上部消化管検査における消化管粘膜下腫瘍の有病率は約3%とされる。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    症候性を示す症例では,腹痛・腹部膨満感・通過障害・吐下血等の症状を呈することが多いが,食道・胃・十二指腸症例の多くは無症候性で,スクリーニングや他疾患の精査を目的とした上部消化管内視鏡やCT検査で偶然発見されることも多い。

    【消化管内視鏡】

    消化管粘膜下腫瘍は,粘膜表層に上皮性変化を伴わない,立ち上がりのなだらかな隆起として観察される。増大傾向,潰瘍形成,辺縁不整の3所見は,ハイリスクGISTを示唆する所見である。超音波内視鏡では,実質エコー不均一,辺縁不整,周囲リンパ節腫大が悪性所見とされる。確定診断には病理学的評価が必要であり,腫瘍径が2cm以上の場合や悪性所見を伴う病変に対しては,潰瘍部の生検や,ボーリング生検,超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診等が推奨される。

    【造影CT】

    大型,増大傾向,造影効果を示す場合はGISTが示唆され,さらに不均一な造影効果,辺縁不整,壊死・出血等は悪性所見と考えられている。

    【病理学的検査】

    GISTでは,紡錘形細胞が束状に錯綜する配列を呈する。その他,免疫組織化学染色が腫瘍の鑑別に寄与する。GISTでは,CD117(KIT)・DOG-1・CD34が陽性となる。一方,desmin・α-SMAが陽性の場合は平滑筋腫,S-100が陽性の場合は神経鞘腫と診断される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    粘膜下腫瘍のうち,無症状かつ平滑筋腫・神経鞘腫・囊胞・迷入膵・リンパ管腫・脂肪腫などの良性腫瘍の診断が得られている場合は経過観察が可能である。一方,病理学的にGISTの診断が確定した場合や,通過障害などの症状を伴う場合は外科的切除の適応である。組織診断が得られてない粘膜下腫瘍の場合は,臓器や腫瘍径に従って方針を決定する。

    GISTは食道に発生することは比較的少ないが,胃の粘膜下腫瘍はGISTの頻度が最も高い。胃の粘膜下腫瘍で腫瘍径が>5cmの場合は,GISTを考慮し外科的切除を選択する。腫瘍径が小型(<2cm)であり悪性所見がない場合は,年に1~2回の内視鏡による経過観察も可能とされる。しかし,発見時の腫瘍は,急速に変形,増大をきたすことを考慮しておく必要がある。腫瘍径が2~5cmである場合は,超音波内視鏡下穿刺(EUS-FNAB)等による積極的な組織採取を試みる。しかし,悪性所見(増大・潰瘍形成・辺縁不整)が明らかで,強くGISTが疑われる場合には,病理診断が得られずとも外科的切除を考慮する。

    残り1,209文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top