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基底細胞癌[私の治療]

No.5026 (2020年08月22日発行) P.40

安齋眞一 (日本医科大学武蔵小杉病院皮膚科部長・教授)

登録日: 2020-08-24

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  • 主に,毛芽細胞に分化した腫瘍細胞で構成される悪性腫瘍である。局所破壊性はあるが,遠隔転移はきわめて稀である。

    ▶診断のポイント

    臨床症状およびダーモスコピー所見から本腫瘍を疑い,病理組織像で診断を確定する。臨床病理学的には,主に以下のように分類される。

    【表在型】

    臨床的には,皮膚面より軽度に隆起する扁平な斑を形成する。紅色あるいは赤褐色の局面を背景に黒色あるいは褐色の斑を混じる。軀幹に多い。病理組織学的には,腫瘍細胞が比較的小型の結節状病変を形成し,被覆表皮あるいは皮膚付属器上皮から蕾状に突出し,病変は原則的に真皮乳頭層に限局する。

    【結節型】

    通常,日本人では黒色あるいは黒褐色の結節を形成する。顔面に好発する。皮膚潰瘍を伴うと結節潰瘍型と呼ばれる。病理組織学的には,真皮に毛芽細胞様細胞が,大小様々な結節を形成する。充実型,腺様型など種々の亜型がある。時に病変は,皮下脂肪組織やそれより深部の組織に及ぶ。

    【モルヘア(斑状強皮症)型】

    臨床的には,浸潤を伴う斑を形成することが多い。時に皮膚潰瘍を伴う。皮膚色や紅色の局面のこともあるが,病変のどこかには黒色あるいは褐色の色素沈着を伴うことが多い。臨床的に病変境界は不明瞭である。顔面に多い。病理組織学的には,腫瘍細胞が小さな胞巣を形成し,増加した膠原線維間に散在性あるいは集簇して分布する。病理組織学的にも病変境界が不明瞭である。

    【線維上皮腫型】

    稀な病型で,臨床的には,軟線維腫あるいは脂漏性角化症などに類似した像を呈する。病理組織学的には,毛芽細胞様細胞が,索状あるいは網状に分布する。

    【その他】

    病理組織学的に重要な亜型として,小型の腫瘍細胞巣が裂隙形成を伴わずに浸潤性に増殖する小結節型と,毛芽細胞様に分化した腫瘍細胞の一部が有棘細胞様細胞に分化した基底扁平癌(basosquamous carcinoma)がある。

    ▶私の治療方針

    手術的切除が第一選択となる。できれば,全切除する前に病変の一部を生検して,その病理組織像を確認しておく。それは,小結節型やモルヘア型では,病変境界が不明瞭となりがちであり,臨床的な病変境界を越えて病変が進展している場合があるからである。近年ダーモスコピーの発達により,比較的小型の基底細胞癌が発見される場合が多く,そのような場合には,最初から全切除生検を行うことも多い。

    「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」にあるように,臨床的に病変境界が明瞭であり小型の低リスク例では4mm程度,大型の病変や病変境界の不明瞭な高リスク例では5~10mm程度離して切除する。逆に,境界明瞭な1cm以下の小型の病変に関しては,より少ない切除マージンで切除することも多い。深さに関しては,通常皮下脂肪組織を十分含め,肉眼的に腫瘍が露出しない深さで切除する。鼻部や耳介部など,皮下脂肪組織が豊富ではない部位の病変や,モルヘア型や小結節型では,肉眼的に腫瘍が取り切れているかどうかの判断が困難な場合がある。その場合には,皮下脂肪組織全層での切除あるいは下床の筋層,軟骨などを含めた切除を要する場合がある。

    その後,欠損に応じて再建を考慮する。単純縫縮,局所皮弁,植皮が行われることが多い。深部断端,側方断端とも,臨床的に完全切除されているかどうか疑わしい場合には,ホルマリン固定の永久標本で,まず切除検体の断端の評価を行い,完全な切除を確認した上での二期的な再建が必要である。

    合併症など種々の理由で,手術的切除が不可能な場合,放射線療法,5-FU軟膏(フルオロウラシル)外用,凍結療法,光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT),イミキモド外用といった治療が行われている。

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