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造血器腫瘍に生じる発熱性好中球減少症に対する基礎疾患ごとの対応のポイントは?

No.5023 (2020年08月01日発行) P.50

磯部泰司 (福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学准教授)

髙松 泰  (福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学教授)

登録日: 2020-07-29

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  • 「急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群などの骨髄系腫瘍」と「悪性リンパ腫や多発性骨髄腫などのリンパ系腫瘍」の治療後などに生じる発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)への対応は,必ずしも同一ではないと思われます。基礎疾患の違いを考慮した治療戦略について,福岡大学・髙松 泰先生に解説をお願いします。

    【質問者】

    磯部泰司 福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学 准教授


    【回答】

    【FNが重症化するリスクを考慮して抗菌薬治療を選択する】

    ガイドラインでは,FNを発症した場合はセフェピム,セフタジジム,イミペネム・シラスタチン,メロペネム,タゾバクタム・ピペラシリンのいずれかを単剤で経静脈投与することが推奨されています。しかし,基礎疾患や全身状態によりFNが重症化するリスクが異なるため,リスクに応じた抗菌薬治療を行う必要があります。

    好中球減少の程度と期間は,重要なリスク因子です。急性白血病の寛解導入療法時は高度な好中球減少が長く続くため重症化するリスクが高く,悪性リンパ腫に対するCHOP療法時は好中球減少をきたしても2~3日で回復し低リスクです。患者側の因子として高齢者,慢性閉塞性肺疾患や心不全,肝障害,腎障害,コントロール不良な糖尿病などの併存症,血行動態が不安定な場合(敗血症)は高リスクです。肺炎,皮膚・軟部組織感染症など感染巣を伴うと難治性になるため,腫瘍による気道や消化管,胆管,尿路の閉塞,静脈カテーテルの留置,治療関連の皮膚・粘膜障害は重症化するリスクを高めます。

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