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腎・尿管損傷[私の治療]

No.5019 (2020年07月04日発行) P.43

近藤幸尋 (日本医科大学大学院医学研究科男性生殖器・泌尿器科学分野大学院教授)

登録日: 2020-07-05

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  • 腎外傷は泌尿器外傷の中で最も頻度が高く,多くの場合は保存的に管理することができるが,時として出血や尿漏に対して経カテーテル的動脈塞栓術(transcathetal arterial embolization:TAE),手術,ドレナージなどの対応が必要になることがある。急性期は出血で致命的になるリスクと尿漏による感染症のリスクがあり,これらのリスクを迅速かつ的確に評価し適切な対応をとることが求められる。一方,尿管損傷は医原的なものが多く,早期診断によりカテーテル治療または再建術を行う。

    ▶診断のポイント

    血尿および腹部外傷が疑われる際には積極的に腎損傷を疑い,超音波断層撮影や造影CTを行う。また,術後のドレーン流出量の増加などで尿管損傷を疑う場合にはインジゴカルミン静注や造影CTを行う。

    【損傷部位と程度の診断】

    鈍的腎外傷の約70%で肉眼的血尿を認め,重症度により出現率が上昇する傾向があるが,重症であっても肉眼的血尿を認めないことがある。肉眼的血尿がなくとも,受傷時のエピソードや身体所見などで腎外傷が少しでも疑われるなら積極的に画像検索をするべきである。

    診断においては超音波断層撮影と造影CTが中心となる。超音波検査は迅速性に優れ,外傷の初期評価として有用である。また,ベッドサイドで使用可能であり,何度でも繰り返し施行することができるため,経過観察にも有用である。造影CTは腎外傷の診断の中心的役割を担い,腎実質の損傷の程度,血腫の程度,血管損傷の有無,尿漏の有無の評価が可能である。動脈相では動脈損傷の有無を判定することが可能であり,その後のTAEの際の情報となる。実質相を撮影することにより,損傷形態の判定が可能である。排泄相では尿漏の診断が可能である。なお,単純CTは血腫の存在を診断することは可能であるが,造影CTと比べて得られる情報が少ないので省略可能である。

    尿管損傷に関しては,手術中に損傷に気づく場合と術後に気づく場合とがある。術中の場合には対応を泌尿器科と相談すべきであるが,術後の場合にはドレーン流出量の増加などで気づくことが多く,インジゴカルミンを静注し診断する。部位に関しては造影CTを行う。

    ▶私の治療方針・治療の組み立て方

    治療方針を決定する際,腎外傷の場合には「日本外傷学会臓器損傷分類2008」に従って分類することが重要である。尿管損傷に関しては上記分類が存在しないため,断裂の程度と場所により治療方針を立てる。

    腎損傷は,造影CTで血腫の存在を確認し造影剤の溢流の有無を確認する。Ⅰ型は被膜下損傷で腎そのものに損傷がないもの,Ⅱ型は腎の表在性損傷,Ⅲ型は深在性損傷であり,単純型と複雑型にわかれる。

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