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鼻骨骨折[私の治療]

No.5018 (2020年06月27日発行) P.46

大村和弘 (東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科)

登録日: 2020-06-30

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  • 鼻骨骨折は主に外傷によって引き起こされるものであり,顔面骨骨折の中で最も頻度が高い。鼻骨骨折の患者を診察する際には,外傷により頭蓋内・眼窩内の損傷がないかどうかを除外したあとに診療にあたる必要がある。

    ▶診断のポイント

    鼻骨骨折単独であれば,急性期は耳鼻咽喉科が対応する疾患である。整復には急を要さず,腫れが落ちついた受傷後1週間あたりで処置することが多い。急性期の処置で満足が得られない場合や,受傷から3週間以上経過している場合は,形成外科での観血的整復固定術が望ましい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    受診時に,視力や眼球運動障害,頭痛などの問診・身体診察を行うことに加えて,最近はCTでの撮影を行うことも多く,鼻骨骨折とは言えども,頭蓋内・眼窩壁骨折・眼球内を含めた総合的な評価が必要である。

    頭蓋内や眼窩の損傷がある場合,顔面の開放骨折の場合は,脳神経外科・眼科・形成外科へのコンサルトが必要となる。仮に損傷を疑う所見がなかったとしても,症状の増悪や所見の新たな出現があった場合は,直ちに受診を要する。ちなみに,鼻骨骨折単独の場合は,耳鼻咽喉科が初期対応することで十分整復が可能と考える。

    基本的に急性期は,外傷部分の腫脹が著しく,鼻出血を伴うことも多く,評価のみで整復は後日となることが多い。経過観察中は鼻かみを行わないように指導し,抗菌薬の投与を行う。必要に応じて破傷風の予防接種なども考慮に入れる。

    後日に再診察を行う際は,以前の顔写真を持ってきてもらうことで,元の鼻のラインのイメージをつかむことができる。整復を行うかどうかに関しては,患者の希望となる。

    整復を行う際は,①整容面,②機能面に関する説明が必要となる。①整容面に関しては,鼻骨骨折によって弯曲した鼻のラインを患者がどのように感じているかである。②機能面に関しては,鼻骨骨折の場合は,鼻中隔も変形していることがあり,鼻閉に関して問診が必要になる。上記の所見や症状に対して外科的に整復を希望する場合にのみ,整復を行う。急性期を過ぎても,形成外科的な整復が可能であることを伝えると,冷静になって考えることができる患者も多い。

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