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肺吸虫症[私の治療]

No.5012 (2020年05月16日発行) P.41

金澤 保 (産業医科大学医学部免疫学・寄生虫学講座教授/医学部長)

登録日: 2020-05-16

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  • 肺吸虫の感染によって引き起こされる疾患を総称して肺吸虫症と呼ぶが,肺吸虫はさらに多くの種に分類されるため,寄生している肺吸虫の種名が特定あるいは推定された場合は,ウエステルマン肺吸虫症あるいは宮崎肺吸虫症等の種名を付した疾患名で呼ばれる。以下に記す食材中から感染する。本疾患は法律で届出が義務づけられている疾患でないため,正確な患者数は不明と言わざるをえないものの,国内では年間数十例,多くとも100例には満たない患者発生があるのではなかろうか。外国人で,母国において感染したと思われる肺吸虫症を診ることもある。このような症例では肺吸虫の種を決めることは容易でない。

    ▶診断のポイント

    何らかの呼吸器症状を伴い,末梢血液中に好酸球増多を認めた際には本疾患を疑う。BALF中や胸水中に多数の好酸球を認めたならば本症を強く疑う。呼吸器症状発現の数カ月~1年前に,モクズガニ(上海ガニ),サワガニ,イノシシ肉等のジビエ料理を食べたことが確認できれば本疾患の可能性はきわめて高い。

    肺吸虫がヒト体内で成熟成虫にまで発育すると,肺に結節性あるいは空洞性病変をつくる。このような症例では喀痰や糞便中に肺吸虫卵を確認することが可能であり,虫卵を検出すれば確定診断を下せる。成熟成虫にまで発育しない未熟な幼若成虫寄生の場合は胸腔内のみならず皮下,頭蓋内等様々な部位を虫体が移動するため,多彩な症状を呈する。胸腔内に虫体が侵入すると気胸や胸水等が認められる。このような幼若成虫寄生例の診断には抗体検査は必須である。

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