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肺炎診療において喀痰グラム染色をすべき対象は?

No.5012 (2020年05月16日発行) P.51

加藤英明  (横浜市立大学附属病院感染制御部講師)

笠松 悠 (京都府立医科大学分子病態検査医学/ 感染制御・検査医学教室)

登録日: 2020-05-15

最終更新日: 2020-05-12

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  • 喀痰グラム染色は有用であるという講義や総説をよく目にしますが,米国胸部疾患学会(American Thoracic Society:ATS)/米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America:IDSA)のガイドラインには入院患者の一部のみ推奨と記載されており,実際の肺炎診療においても初診時に施行して治療方針を決定している場面をあまり見かけません。グラム染色をすべき対象を教えて下さい。
    京都府立医科大学・笠松 悠先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    加藤英明 横浜市立大学附属病院感染制御部講師


    【回答】

    【ガイドラインでの推奨としては「状況により様々」だが,グラム染色により適切な治療が行える可能性がある】

    ATS/IDSAのガイドラインによると,合併症のない外来の市中肺炎には喀痰グラム染色どころか培養も推奨されておらず,moderate以上のエビデンスレベルの治療はアモキシシリン(AMPC)1回1g1日3回となっています1)。最も頻度が高く死亡率も高い肺炎球菌と2番目に頻度が高いインフルエンザ桿菌のみを意識した狭域治療であり,入院の段階で広域抗菌薬に切り替えるという考え方です。これをわが国に当てはめると,肺炎球菌はペニシリン耐性菌の占める割合が高く,インフルエンザ桿菌もBLNAR型というAMPC耐性菌が半数近くになります。わが国ではAMPC投与量が1回0.25~0.5g1日3回と少なく,治療失敗のリスクがあります。喀痰培養1検体当たりのコストも米国平均で58USドル(1ドル110円換算で約6400円)に対してわが国は1600円と安いです2)3)。初期治療が反応不良の際に,起炎菌と薬剤感受性が判明している意義は患者にとって大きいと思います。

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