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腎・尿路・性器結核[私の治療]

No.5011 (2020年05月09日発行) P.62

宮嵜英世 (国立国際医療研究センター病院泌尿器科診療科長)

登録日: 2020-05-10

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  • 腎・尿路・性器結核は結核の中で2~3番目に多い。結核予防会疫学情報センターの報告1)によれば,2018年の人口10万対の結核罹患率は12.3で減少傾向が続いているものの,欧米諸国に比べるといまだに高い。2000~07年の間に399病院のうち153病院で201人の尿路結核患者が治療され,その感染部位は腎(n=242),尿管(n=96),膀胱(n=100),精巣上体および精巣(n=81),前立腺(n=9)であったとのわが国からの報告がある2)。症状として特徴的なものは少なく,頻尿,排尿痛,残尿感などの排尿症状,陰囊内の腫瘤,発熱などが比較的多いが,無症状のこともある。画像所見としては尿路閉塞,腎盂腎杯の変形,腎萎縮,石灰化,漆喰腎,腎膿瘍などが挙げられる。なお,男性の性器結核は半数以上で肺結核(および/または)腎結核を伴っているが,孤発性の場合もありうる。

    ▶診断のポイント

    肺結核を伴わない場合の早期診断は難しい。上記の画像所見がある際に疑うが,悪性腫瘍との鑑別に苦慮する場合もある。また,通常の抗菌薬治療で難治性,再発性の尿路感染の際に疑う。疑われた場合には塗抹染色法,分離培養法,核酸増幅法を行い確定するが,必ずしも陽性にならないこともあるので注意が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    通常の結核と同様の標準的治療(4剤併用→2剤併用)を行う。精巣上体結核は尿路からの逆行性感染の場合があるが,そのほかの尿路結核は肺からの腎への血行性転移を介して尿管,膀胱へと広がったものと考えられる。血行性転移した結核に対しては,4剤併用療法を2カ月,その後2剤併用療法を7カ月行っている。長期の服用が必要になるため,服薬コンプライアンスが問題となる。確実に服用してもらうために1日1回の内服にしている。下記には朝食後と記載しているが,確実に内服できるタイミングで服用してもらう。

    イソニアジドの副作用(末梢神経炎,視神経炎)を防ぐ目的で,ピリドキサール(ビタミンB6)を併せて処方している。また,硫酸ストレプトマイシンは週2〜3回の注射が必要なため,エタンブトールがどうしても使えない場合にのみ使用している。イスコチン®(イソニアジド),リファジン®(リファンピシン)に耐性を認める場合や副作用で継続困難な場合には,クラビット®(レボフロキサシン)などが考慮されるが,標準的治療が難しい場合には結核治療のエキスパートに相談するほうがよいと思われる。

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