株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

貧血[私の治療]

No.5007 (2020年04月11日発行) P.47

石黒 精 (国立成育医療研究センター教育研修センターセンター長・血液内科診療部長)

登録日: 2020-04-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 小児に特徴的な貧血に重点を置いて述べる。小児の一般診療でよく出会う鉄欠乏性貧血は,成長著しく,鉄需要の増える乳児後期と思春期女子に多い。生後4カ月以後の早産児にもしばしばみられる。
    鑑別する疾患は,年齢によって異なる。新生児期には溶血性貧血,Diamond-Blackfan貧血などの産生障害,母児間輸血症候群などの失血がみられる。溶血性貧血は,母児間血液型不適合などの免疫機序に加えて,遺伝性球状赤血球症などの膜異常,G6PD欠乏症などの酵素異常,サラセミアなどの異常ヘモグロビン症が原因となる。
    未熟児早期貧血はエリスロポエチンの相対的不足が原因であり,生後4~8週に現れる。血栓性微小血管障害による溶血性貧血では,志賀毒素による溶血性尿毒症症候群やADAMTS-13欠乏症による血栓性血小板減少性紫斑病が小児に多い。産生障害を起こす遺伝性骨髄不全症候群には,赤芽球癆に加えて,Fanconi貧血と先天性角化不全症が知られている。

    ▶診断のポイント

    小児では遺伝性疾患が多いので,既往歴で反復しているかに注意して聴く。家族の貧血,輸血,出血傾向,黄疸,胆石,胆囊・脾臓摘出術についても聴取する。性別,人種,出生地も参考になる。症状では動悸・息切れ・易疲労性・めまいを自覚し,出血や溶血による急激な貧血は,ショックを引き起こす。一方,産生障害による慢性的な貧血では自覚症状に乏しい。身体所見では,眼球結膜の蒼白や眼瞼結膜の黄疸,出血斑・肝脾腫・リンパ節腫大に注意する。ビリルビン尿を伴わない黄疸は,間接ビリルビン高値を示し,溶血を示唆する。舌粘膜の萎縮では鉄やビタミンB12(VB12)欠乏を,指骨異常があれば先天性骨髄不全を疑う。甲状腺機能低下症や鉄・VB12欠乏症では神経症状が現れる。

    平均赤血球容積と赤血球産生を示す網赤血球数から鑑別診断を始める。ヘモグロビン合成障害を反映している小球性貧血では,血清の鉄とフェリチン値が低下していれば,鉄欠乏性貧血と確定できる。血清鉄が低下し,フェリチン値が低下していなければ,慢性炎症などの続発性貧血を考える。血清鉄が低下していない場合は,サラセミアのようなグロビン合成障害を考える。

    VB12や葉酸が欠乏するとDNA合成が障害され,細胞成熟が乱れて巨赤芽球性貧血になる。自閉症児など,偏食がないか聴く。

    網赤血球数が増加した正球性貧血ではCoombs試験を行う。Coombs試験陰性の場合は赤血球形態に注目し,遺伝性溶血性貧血を鑑別する。なお,伝染性紅斑罹患時に初めて診断される溶血性貧血が多いこともよく知られている。

    残り1,132文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top