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病院フォーミュラリ策定の意義とこれからの薬物療法のあり方─浜松医科大学医学部附属病院の取り組みに学ぶ〈提供:沢井製薬株式会社〉

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  • 経済性を前面に出したフォーミュラリはNG

    ─これからフォーミュラリの導入を検討する病院に特に注意してほしい点は何ですか。

    川上 経済性が前面に出たフォーミュラリの議論はなかなか現場に受け入れられません。医師の視点に立って導入のメリットを説明することが重要です。

    フォーミュラリ導入により医師は標準的な薬剤選択を効率的にできるようになりますので、一人一人の患者さんの診療により多くの時間を割くことができるようになります。また、いろいろな薬剤を処方するよりも処方を標準化した方が使用経験も蓄積されますので、医薬品の効果・副作用の知識も深まります。

    薬剤部門も、適切な医薬品情報の提供や服薬指導により多くの時間を割くことができるようになります。在庫の管理・スペースを効率化し、同種同効薬が減ることで取り違えなどの調剤エラーも起きにくくなります。

    大事なのは、いわゆる「1増1減」の方針を見直すことです。これは在庫増を避ける一つの手段でしかなく、手段が目的化してしまうと、採用品目のラインナップやフォーミュラリはガタガタになってしまいます。

    浜松医大病院では新薬の段階でも採用品目を絞り込んでいます。例えばSGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬でも2〜3品目を採用しているだけです。たくさんの製品を並べてあれこれ使っても、本当の意味でエビデンスの蓄積にはならないのではないでしょうか。

    ─中医協の議論などをフォローしている医師の間には、フォーミュラリを導入されると「自分たちの処方権が侵害される」「個々の患者に合わせた個別化医療ができなくなる」といった懸念があるように思います。

    川上 フォーミュラリは「全体最適化」を図るものですが、結果的には個々の患者さんの薬物治療を守れるというところをご理解いただきたいと思います。大多数の患者さんにはフォーミュラリに沿った処方でスピーディーに対応できるので、むしろ診察や治療後のフォローに時間をかけることができるようになりますし、対応できない患者さんに対する際には速やかに個別化医療にスイッチできるようになります。

    ─必ずしもフォーミュラリ通りに処方しなければならないということではないのですね。

    川上 「フォーミュラリと違うから、この薬を処方してはだめです」などと言ったら、医師には受け入れてもらえません。私たちが進めている薬剤管理はそういうものではないのです。

    フォーミュラリの地域への展開も視野

    ─浜松医大病院のフォーミュラリはジェネリック医薬品を中核として作られていますが、複数のジェネリックがある場合は何を基準に選定していますか。

    川上 これだけが重要というポイントはありません。剤形や包装、使用性、情報提供、供給体制も含め、あらゆる内容を見て判断しています。

    ─中医協では、山形県酒田市の地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」が進める地域フォーミュラリの事例も紹介されました。浜松医大病院のフォーミュラリを地域に展開する考えはないのでしょうか。

    川上 浜松医大病院の外来患者は地域の薬局で調剤されます。また、入院患者は地域の医療機関から紹介され、地域に戻っていく方です。将来的にはフォーミュラリが地域に波及することのメリットはあると考えています。

    ただし、地域フォーミュラリの考え方は地域包括ケアシステムが進まないと定着しないように思います。日本海ヘルスケアネットの取り組みもフォーミュラリだけが突出しているわけではなく、地域医療連携推進法人として様々な事業を進める中にフォーミュラリもあるということだと思います。地域フォーミュラリのニーズは地域包括ケアシステムが進めば自ずと広がっていくでしょう。

    (2019年8月/取材・編集:日本医事新報社)

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