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睡眠時無呼吸症候群(SAS)[私の治療]

No.5001 (2020年02月29日発行) P.43

陳 和夫 (京都大学大学院医学研究科呼吸管理睡眠制御学講座特定教授)

登録日: 2020-03-03

最終更新日: 2020-02-26

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  • 睡眠時無呼吸には呼吸努力を伴う閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea:CSA)があり,前者は通常いびきを伴い,後者の代表例は心不全患者にみられることが多いチェーン・ストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration:CSR)である。頻度は高く,中等症OSAは成人男性で20%以上,成人女性で10%前後との報告が多くなった。高血圧,糖尿病,心房細動,心不全患者などでは治療対象例が数割以上になるが,特に薬物治療などの従来の治療に抵抗性の患者群において合併率は高い。睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は睡眠呼吸障害の中で最も頻度は高いが,高二酸化炭素血症を伴う呼吸不全,神経筋疾患患者などにみることが多い睡眠関連低換気との鑑別は重要である。

    ▶診断のポイント

    標準的な検査であるポリソムノグラフィ(polysomnography:PSG)と簡易モニター(パルスオキシメトリーと呼吸センサー)があるが,後者はOSAの疑いが強い症例が適応とされる。わが国の健康保険上はOSAを疑う場合,まず,簡易モニターを行う必要がある。脳波を測定しない簡易モニターでは測定1時間当たりの呼吸異常数しかわからないが,保険適用上はPSGによる睡眠1時間あたりの無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)と同等に扱われる。

    AHI 5以上に日中の過度の眠気などの臨床症状を伴った場合,あるいはAHI 15以上であればOSA症候群(OSAS)と診断されていたが,最近はAHI 5以上で観察者による無呼吸の発見,あるいは,高血圧,気分障害,冠動脈疾患,脳卒中,うっ血性心不全,心房細動または2型糖尿病の合併により,OSASという診断も認められつつある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    SASを治療する目的は,日中の過度の眠気や集中力不足などの臨床症状の改善と脳心血管障害などの予防である。OSAの標準治療はcontinuous positive airway pressure(CP AP)である(わが国の保険適用は「治療の実際」を参照)。CPAPの使用困難例およびPSGでAHIが20以下であってもAHI 5以上であれば歯科での睡眠時無呼吸用の口腔内装置(oral appliance:OA)作製は保険治療として可能である。CPAPの保険適用基準を満たせば,CPAPが使用されるべきであるが,使用困難例や軽症例にはOAが勧められる。側臥位睡眠などによりSASが改善する場合があるので,CPAP,OAの使用困難例には側臥位睡眠も勧められる。

    心不全患者の状況によってCPAP,ASV(adaptive servo ventilation),酸素療法の選択をすることがある。夜間の酸素飽和度のモニタリングで間欠的で周期的な酸素飽和度の低下でなく,数分間以上にわたる持続的な低酸素血症が認められ,日中にも高二酸化炭素血症が認められる場合,身体疾患〔慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),低肺機能,神経・筋疾患など〕,肥満低換気症候群による睡眠関連低換気の可能性もあり,この場合,CPAPではなく非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)が必要になることがあり,注意が必要である。

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