株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

褥瘡[私の治療]

No.4999 (2020年02月15日発行) P.46

尹 浩信 (熊本大学大学院生命科学研究部皮膚病態治療再建学講座教授)

登録日: 2020-02-15

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 褥瘡とは,持続的圧迫により生じる皮膚潰瘍である。持続的圧迫が生じる背景としての全身疾患や栄養不良,加齢による皮膚やその下床の萎縮,骨の突出や尿失禁などの創周囲の環境が治癒を困難にし,また,介護やケアなどの社会的状況が発生,経過に大きく関与することが特徴である。

    ▶診断のポイント

    持続的圧迫が生じる場所にある皮膚潰瘍では褥瘡を疑う。反応性充血,糖尿病などによる末梢動脈疾患,便や尿の刺激による皮膚炎,皮膚カンジダ症,接触皮膚炎,電気メスによる熱傷,消毒液による化学熱傷などを鑑別する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まず発症要因を検討し,その要因の除去を試みる。直接の原因は持続的圧迫による阻血性壊死であり,除圧を検討する。体位変換および体圧分散寝具の選択も重要である。低栄養状態は重要な障害因子であり,低アルブミン血症は組織の浮腫を惹起して創治癒に悪影響を及ぼし,また,貧血は酸素供給量の低下をまねく。これらの観点から栄養状態の改善は必要である。

    また,失禁,下痢,発汗などによる局所の湿潤や汚染は皮膚浸軟を起こし,皮膚障害を生じさせる。この点から洗浄,スキンケアも重要なポイントとなる。

    皮膚感染症,炎症性皮膚疾患が局所にあれば創傷治癒に影響を及ぼすので,その治療も必要である。抗腫瘍薬やステロイドによる易感染性,創傷治癒遅延も忘れてはならない。

    次に,褥瘡を評価して急性期か慢性期か,その深達度と病期(黒色期,黄色期,赤色期,白色期)を明らかにする。褥瘡の状態により局所の治療方針もまったく異なる。

    褥瘡の壊死組織を除去することは,褥瘡の治療を考える上で非常に重要である。壊死組織が存在したままだと創傷治癒は望めず,壊死組織の除去は感染の温床を除去し,創傷治癒を促進する。全身状態など状況が許せば,壊死組織の外科的デブリードマンは有用であり行うが,不可能な場合も多い。外用薬による化学的デブリードマンはほとんどの場合可能であり,カデキソマー・ヨウ素,デキストラノマー,沃度ホルム,ブロメラインの使用が推奨される。乾燥した壊死組織を除去するにはスルファジアジン銀の使用が推奨される。

    残り1,392文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top