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肺真菌症[私の治療]

No.4999 (2020年02月15日発行) P.42

登録日: 2020-02-18

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  • 肺真菌症は,アスペルギルス,クリプトコックス,ムコール,ニューモシスチスなど,多様な真菌によって起こる感染症である。原因真菌によって選択すべき抗真菌薬が異なる上,宿主の状態に応じて発症する病態にも違いがみられる。多岐にわたる肺真菌症の病態のうち,本稿では慢性進行性肺アスペルギルス症(chronic progressive pulmonary aspergillosis:CPPA)の治療について概説する。CPPAは2013年にIzumikawaら1)が提唱したわが国独自の名称で,従来のchronic necrotizing pulmonary aspergillosisとchronic cavitary pulmonary aspergillosisを包含した疾患概念である。

    ▶診断のポイント

    1カ月以上続く咳,膿性痰,血痰などの症状と,空洞を伴う浸潤影の増悪,空洞壁や胸膜の肥厚などの典型的画像所見に加え,喀痰細胞診でアスペルギルスを認めるか,抗アスペルギルス沈降抗体陽性を確認すれば臨床診断可能である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    本症は増悪と寛解を繰り返しながら慢性に進行するため,患者の状態に応じて治療法を選択する。慢性肺アスペルギルス症の治療ではファンガード®とブイフェンド®のランダム化オープン比較試験2)があり,有効性は同等であったが副作用発現率ではファンガード®が有意に低かったとされる。

    血痰や喀血を認めたり,全身状態の不良な患者では,入院の上,初期治療をファンガード®などのキャンディン系薬で開始する。ブイフェンド®注,カンサイダス®,アムビゾーム®も使用できる。その後病態が改善し,十分な経口摂取が可能であれば,ブイフェンド®錠,イトリゾール®内用液またはカプセルなどの経口薬へのステップダウンを考慮する。一方,軽症例では当初からアゾール系経口薬で治療を開始することが可能な場合もある。ジフルカン®は抗アスペルギルス活性を有さないので使用できない。フロリード®は頻回投与が必要な点から,ファンギゾン®は副作用の面から推奨されない。

    治療期間に関する明確なエビデンスはないが,症状の改善までに数週間を要することが多く,さらに維持療法を含め月の単位で治療を継続する必要がある。治療終了時期は,症状の消失や炎症反応の改善,画像の安定化などを総合的に判定し,個別に判断することが重要である。

    各々の薬剤の副作用については添付文書を確認されたいが,ブイフェンド®では霧視,羞明などの視覚異常をきたしやすいことが知られている。本薬剤を外来で開始する場合は,自動車の運転などを避けるよう説明する注意が必要である。また,ブイフェンド®では,その代謝の個人差が大きいため,血中濃度にばらつきが出やすい。適切な時期に薬物血中濃度を測定し,必要に応じて用量調節を行う。

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