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非アルコール性脂肪肝炎(NASH)[私の治療]

No.4999 (2020年02月15日発行) P.50

江口有一郎 (佐賀大学医学部附属病院肝疾患センター特任教授)

登録日: 2020-02-13

最終更新日: 2020-02-10

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  • 明らかな飲酒歴(エタノール摂取量として,男性30g/日未満,女性20g/日未満)がない脂肪性肝疾患を非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)と定義し,その中でも脂肪変性に加え,慢性的な炎症と線維化を伴い肝硬変や肝癌への進展をきたす慢性肝疾患が非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)である。NASHは肝癌発症のリスクもあるため,腫瘍マーカーを含む肝機能検査や,腹部超音波検査やCT検査などの肝癌の定期的なサーベイランスを行う1)2)

    ▶診断のポイント

    NASHの確定診断には肝生検が必須であるが,生検を行わない場合でも腹部超音波検査やフィブロスキャン®,MRエラストグラフィー(magnetic resonance elastography:MRE)などの肝硬度測定や,血清の線維化マーカーやFIB-4インデックス,NAFLD fibrosisスコアなどのスコアリングシステムを用いて,線維化の程度を把握し,follow upや治療の方針の参考とする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    NAFLDやNASHの治療方針の大前提である食事・運動療法によって十分な改善がない場合は,薬物療法を行う。治療目標としては,肝線維化改善を中心として,肝脂肪化や炎症の改善をめざす。また,高度肥満〔体格指数(body mass index: BMI)≧35〕を伴うNASHの場合は,肥満手術が行われることもある。NASHに対する治療効果は,3~6カ月の期間で体重や血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase:ALT)値や画像検査による肝脂肪化などの総合的な評価によって行われる。肝線維化の改善に関しては肝生検を主として,フィブロスキャン®やMREなどの非侵襲的な画像検査で評価する。

    【注意】

    現時点ではNAFLDやNASHに対する保険収載された薬剤はないため,併存する生活習慣病の治療薬で,NASHの改善も期待されている薬剤を用いて治療を行う。現在,NASHに対して複数の国際臨床試験が実施されている。

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