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微小変化型ネフローゼ症候群[私の治療]

No.4997 (2020年02月01日発行) P.38

丸山彰一 (名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科教授)

登録日: 2020-01-30

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  • 微小変化型ネフローゼ症候群は小児の一次性ネフローゼ症候群の約90%,成人の一次性ネフローゼ症候群の約40%を占める。腎病理では,光学顕微鏡では糸球体に変化を認めず,電子顕微鏡で糸球体上皮細胞(足細胞)の足突起の広範な扁平化がみられる。病因としては,T細胞由来の液性因子の存在が想定されているが,いまだに同定されていない。ステロイド治療により90%以上の症例で完全寛解するが,再発は30~70%と高率にみられる。

    ▶診断のポイント

    数日のうちに進行する急性発症のネフローゼ症候群をみた場合には本症を第一に疑う。小児期に多くみられるが,わが国では70歳以上の高齢者にも比較的多く発症する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    一般に,小児例では腎生検をせずに治療を開始するが,成人例では腎生検を施行し確定診断する。治療には,完全寛解を達成し維持することと,薬剤による副作用を最小限とすることの両立が求められる。

    初期治療としては,プレドニン®(プレドニゾロン)0.8~1mg/kg/日(最大60mg)を内服する。1日1回朝に全量を内服する方法と2~3回にわけて内服する方法がある。本症は通常,治療開始後4週間以内に完全寛解が得られる。完全寛解が得られた後,5mg/日まで漸減し1~2年間継続する方法が一般的であるが,短期で投与を終了する方法(短期ステロイド療法)もある。前者では,完全寛解した後,プレドニゾロン初期量を1~2週間継続してから,2~4週ごとに5~10mgずつ漸減,10mg/日に達したら4週ごとに1mgずつ減量し5mg/日で1年程度維持してから再び漸減し中止する。後者では,初期量を4週間継続し,次の4週間は初期量の2/3のプレドニゾロンを隔日内服し,合計8週間経過した時点で中止する。初期治療として,ステロイド内服の前にステロイドパルス治療を施行することもある。急性腎障害(acute kidney injury:AKI)症例では,Na貯留作用により乏尿となり腎機能が低下する危険性に注意を要する。

    4週間のステロイド治療にもかかわらず寛解しない場合は,ステロイド抵抗性としてシクロスポリンを併用する。ネオーラル®(シクロスポリン)1.5~2.0mg/kgを1日1回朝食15分前に内服し,2時間後の血中濃度(C2)が600~900ng/mLになるよう用量を調整する。それでも完全寛解しない場合には,巣状分節性糸球体硬化症をはじめとする他の疾患の可能性を考える。
    再発例の治療はプレドニン®(プレドニゾロン)15~30mg/日で開始する。用量は再発の程度で調整する。

    頻回再発例あるいはステロイド依存例は,ステロイドに加えて,ネオーラル®(シクロスポリン)1.5~2.0mg/kg/日を内服する。それでも,再発する場合には,ステロイド内服治療で寛解導入した後リツキシマブを投与し,再発を予防する。成人では,リツキサン®(リツキシマブ)500mgを1回点滴静注し,その後,半年ごとに同量の投与を繰り返す。ステロイドと免疫抑制薬の内服は漸減し,半年程度で中止する。成人発症例に対するリツキシマブの有効性・安全性は確立していない点に注意が必要である。

    本症における腎予後は良好であるが,特に高齢者では感染症死のリスクが高いことに注意が必要である。ステロイドを長期に漫然と使用することは避ける。

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