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ノロウイルス感染症[私の治療]

No.4996 (2020年01月25日発行) P.48

笠原 敬 (奈良県立医科大学感染症センターセンター長・病院教授)

登録日: 2020-01-24

最終更新日: 2020-01-21

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  • ノロウイルス感染症は,エンベロープを持たないRNAウイルスの一種であるカリシウイルス科に属するノロウイルスによる感染症である。なお,カリシウイルス科には,ノロウイルスと同様に感染性胃腸炎の原因となるサポウイルスも属する。ノロウイルスは1968年にオハイオ州ノーウォークで発生した食中毒で初めて発見された。ノロウイルスにはGⅠやGⅡなど複数の遺伝子型があり,遺伝子型が異なると抗原性が異なるので,遺伝子型が異なれば,短期間に複数回感染することもありうる。ウイルスに感染しても全例発症するわけではなく,10%前後が不顕性感染と言われている。ただし,不顕性感染者でもウイルスの排出がみられ,感染源となりうる。
    原因としては牡蠣などの二枚貝が有名であるが,疫学的には仕出し弁当による食中毒や,ヒト-ヒト感染によるものが多い。

    ▶診断のポイント

    イムノクロマト法を用いた検査診断が可能であるが,保険適用となる患者が限定されている(表1)。また,感度は80%前後と報告されており,陰性でも除外はできない。ノロウイルス感染症そのものに対する抗ウイルス薬が存在しないことや,ノロウイルス以外の原因微生物であっても通常,感染対策は変わらないことから,一般的に「感染性胃腸炎」とひとくくりにして臨床診断することが多い。なお,臨床症状としては,嘔気・嘔吐,下痢,発熱などが典型的な症状であるが,患者によって様々な組み合わせのパターンがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    多くの患者は発症後48~72時間以内に急速に改善する。筆者は周囲の流行状況・接触状況や臨床症状から感染性胃腸炎が疑われる患者には,まず「ノロウイルス(感染性胃腸炎)の場合は明日か明後日にはずいぶん良くなると思います。もし良くならなければまたご来院下さい」と説明している。また,「嘔吐や下痢によって,体の中からウイルスが出て行きますから,出るものは出してよいですよ」と説明している。
    一方で重要なのが,重症患者を見逃さないこと,あるいは重症化の予測である。厚生労働省から出ている「抗微生物薬適正使用の手引き」の「急性下痢症」では,red flag signとして表2の項目を挙げている1)。これらに該当する患者には慎重な対応が必要である。

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