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咽後膿瘍[私の治療]

No.4994 (2020年01月11日発行) P.41

川野利明 (大分大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科講座)

鈴木正志 (大分大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科講座教授)

登録日: 2020-01-10

最終更新日: 2020-01-08

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  • Henleリンパ節と呼ばれる咽後リンパ節は咽頭や中耳と連続しているため,周囲の感染源からの炎症がリンパ流性に波及し咽頭後間隙内のリンパ節炎を誘発する。リンパ節炎からearly abscessと言われるリンパ節内膿瘍を生じ,さらに進行するとリンパ節の膿瘍壁が破壊され,周囲に膿瘍が進展するlate abscessが形成される。最初はリンパ節炎であったものが周囲疎性結合織の炎症である蜂巣炎となり,最終的に咽頭後間隙に膿瘍形成を生じたものが咽後膿瘍であり,縦隔に炎症が波及しないよう早急な治療を要する。咽後膿瘍は,狭義には咽頭後間隙に限局した膿瘍を指すが,広義には椎前間隙や危険間隙の膿瘍も含めて咽後膿瘍と呼ばれることもある。

    ▶診断のポイント

    咽頭後間隙は上端が頭蓋底,下端が第4胸椎椎体に及び,咽頭粘膜と椎骨の間に存在する。前方は深頸筋膜中葉の頰咽頭筋膜,後方は深頸筋膜深葉の翼状筋膜,外方は頸動脈鞘により境界される。傍咽頭間隙と交通があるため周囲からの炎症が波及しやすく,さらに副鼻腔や上咽頭などとリンパ流性の連続がある。また,後方には縦隔まで連続している危険間隙が存在し感染や炎症の拡大が周囲に及ぶことがあるため,咽後膿瘍を疑った場合には早急に造影CTを撮影し,診断と進展範囲を確認する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    特に小児では,上気道炎からの咽後部リンパ節炎から咽後膿瘍を形成することが多く,成人では異物や外傷など続発性に発症することが多い。咽後膿瘍の好発年齢は3歳以下が90%であり,急激な気道変化に対応できる全身管理が可能な施設で行われるべきである。

    発熱,咽頭痛などの症状で発症するが,周囲へ炎症が波及すると嚥下痛や頸部腫脹,いびき,斜頸,開口障害などがみられるようになる。膿瘍が増大し咽頭が圧排され炎症が喉頭蓋へ及ぶと呼吸困難を生じるようになるため,特に乳幼児では厳重な気道管理を要する。また,さらに膿瘍が増大すれば敗血症や縦隔炎の危険性が生じる。

    治療は全身状態,気道状態と造影CTによって判断する。気道浮腫がなくring enhancementが咽頭後間隙のリンパ節内にとどまっているearly abscessの場合には,抗菌薬治療を第一選択とする。気道浮腫を認めたり,late abscessの状態となっていれば基本的に穿刺排膿や切開排膿を考慮し,気道狭窄をきたしていれば気管切開術を行う。

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