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横紋筋肉腫[私の治療]

No.4992 (2019年12月28日発行) P.59

細井 創 (京都府立医科大学小児科学教室教授)

宮地 充 (京都府立医科大学小児科学教室学内講師)

登録日: 2019-12-31

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  • 横紋筋肉腫は,小児で最も頻度の高い悪性軟部腫瘍である。日本では,年間およそ50例の小児例が発症している。小児期特有の腫瘍と思われがちであるが,成人でも幅広い年齢層で一定の割合で発生し,40%は成人例である。

    ▶診断のポイント

    横紋筋肉腫においては,治療前ステージ分類,術後グループ分類,組織型によりリスク分類を決定し,層別化治療を行う。これらを決定するため,横紋筋肉腫が疑われた場合,生検を行う前に,迅速に画像検査などによる全身検索を行う。初回手術前にキャンサーボードを行い,組織採取法,検体処理について決定しておく。病理診断においては,正確な亜型診断のために,肉腫の病理診断に習熟した病理医の診断が必要となる場合がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    現在,日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group:JCCG)の横紋筋肉腫委員会では,小児および30歳未満の若年成人を対象とした横紋筋肉腫に対する臨床試験(JRS-Ⅱ試験)を行っている。治療経験が豊富な臨床試験実施施設へ直ちに紹介の上,初期治療を開始することが望ましい。低リスクA群,低リスクB群,中間リスク群においては標準的治療からさらに急性毒性・長期合併症を低減させることを目的とした臨床試験を実施している。また,高リスク群においては,より深い寛解に至るようにプロトコルを計画し,治療終了後にWT1ペプチドワクチン療法を地固め療法として行う医師主導型治験を実施している。

    以下に臨床試験に参加しない場合の現時点での標準的治療について記載するが,標準的治療をさらに改善すべくデザインされた上記臨床試験に参加することが望ましい。

    低リスクA群に対する標準治療としては,米国小児がん研究グループ(COG)ARST0331研究のVAC1.2(ビンクリスチン,アクチノマイシンD,シクロホスファミド1.2g/m2/サイクル)療法4サイクルとVA(ビンクリスチン,アクチノマイシンD)療法4サイクルの治療が挙げられる。

    低リスクB群では,日本横紋筋肉腫研究グループ(JRSG)JRS-Ⅰ研究の低リスクB群のVAC2.2療法(シクロホスファミド2.2g/m2/サイクル)8サイクル,VA療法6サイクルが挙げられる。

    中間リスク群では,JRSG JRS-Ⅰ研究の中間リスク群,米国COG D9803研究のVAC2.2療法14サイクルの治療が長期成績の確立した治療である。長期合併症としての妊孕性の低下が問題である。

    高リスク群では,標準治療はいまだ存在しない。遠隔転移例を対象として実施された米国COG ARST0431試験において,VAC1.2療法,VDC(ビンクリスチン,ドキソルビシン,シクロホスファミド)療法,IE(イリノテカン,エトポシド)療法,VIr(ビンクリスチン,イリノテカン)療法からなる多剤併用療法が行われ,これまでの遠隔転移例に対する臨床試験と比較して,無増悪生存期間の改善を認めた。しかし,3年時点の無増悪生存率については著しい差はなかった。治癒に至らしめるためには,新規治療法の導入,または新規治療薬の追加が必要であることが示唆されている。

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