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網膜疾患に対する遺伝子治療の現状と今後の可能性

No.4988 (2019年11月30日発行) P.56

奥村直毅 (同志社大学生命医科学部准教授)

栗原俊英 (慶應義塾大学医学部眼科学教室特任准教授)

登録日: 2019-11-27

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  • レーバー先天黒内障に対する遺伝子治療薬である「Luxturna」が,米国で2017年12月に承認されました。網膜疾患に対する遺伝子治療の現状と今後の可能性について教えて下さい。慶應義塾大学・栗原俊英先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    奥村直毅 同志社大学生命医科学部准教授


    【回答】

    【Luxturnaの認可により,遺伝子治療が可能であることが証明された】

    1970年代中期にガンマレトロウイルスによる細胞への実験的遺伝子導入が初めて示されました。その後同じRNAウイルスであるレンチウイルスのほかに,宿主ゲノムへの組み込みがないDNAウイルスであるシミアンウイルス40(Simian virus 40:SV40),ウシパピローマウイルス(bo-vine papilloma virus:BPV),アデノウイルス,単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)による遺伝子導入が報告されました。

    1990年に世界で初めて先天代謝異常のひとつ,アデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)欠損症に対する体外での遺伝子治療が実施されましたが,その後1999年にアデノウイルスベクター大量投与による患者死亡例,2002年にレトロウイルスベクターによる白血病の発症が報告され,一時遺伝子治療開発は停滞しました。近年,病原性がなく非分裂細胞にも導入可能なアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus:AAV)による遺伝子導入が注目され,単一遺伝子疾患に対する治療成功例が多数報告されるようになりました。

    眼科分野では,RPE65遺伝子変異を原因とする一部のレーバー先天黒内障2型に対し,網膜下注射によりAAVベクターを用いてRPE65遺伝子を導入する治療が開発され,最初の3例の結果が2008年に報告されました。2012年に米国遺伝子治療学会(American Society of Gene & Cell Therapy:ASGCT)が米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)に対し,今後5~7年のうちに遺伝子治療の実用化が期待される10疾患(Target 10)を挙げ,そのうち2つが眼疾患で,レーバー先天黒内障と加齢黄斑変性でした。

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