【質問者】
佐藤俊明 杏林大学医学部循環器内科特任准教授
【ICD植込み済みの患者に発作の頻度を減らす目的で内服薬を処方することがある】
Brugada症候群は,1992年にBrugada兄弟により報告され,心電図の右側胸部誘導にコーブド型と呼ばれる特徴的なST上昇を呈し,心室細動によって失神や突然死に至る疾患です。心臓の構造や機能自体に異常は認めず,過去にはぽっくり病とされていた原因不明の突然死症例の中に,本症候群が含まれていたと考えられています。主要遺伝子は心臓NaチャネルをコードするSCN5Aで,遺伝子変異は約2~3割の患者に同定され,遺伝要因のみならず環境要因による発症も示唆されています。30~50歳代の男性に多く,男性ホルモンとの関連も指摘されています。
Brugada症候群に発生する致死性不整脈(心室細動)による突然死を予防するための確実な治療法は植込み型除細動器(ICD)の植込みだけです。心停止や心室細動の既往例はICD植込みの絶対適応となります。わが国のガイドライン(2017年)では,タイプ1のBrugada心電図に加えて,不整脈による失神,痙攣,夜間苦悶様呼吸がある例,または原因不明の失神かつ心臓電気生理検査で心室細動が誘発される例で相対適応となります。また,無症候性であっても年齢,性別,家族歴,遺伝子変異,QRS棘波,J波などのリスクを考慮して植込みが行われることもあります。
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