多発性骨髄腫は形質細胞の腫瘍性疾患で,単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)の存在を特徴とする。高齢者に多く近年も増加傾向にあるが,新規薬剤の登場により治療成績は著明に改善している。
高カルシウム血症や腎障害,貧血や骨病変(CRAB症候)を合併することが多く,初発症状としては腰背部痛や全身倦怠感が多い。無症状でも検診などの際に血清総蛋白の高値やM蛋白の存在を指摘され,診断の契機となることがある。
血中や尿中におけるM蛋白の検出には,蛋白分画や免疫グロブリン定量,免疫固定法,血清遊離軽鎖などの検査を行う。一般的にはM蛋白により血清総蛋白は高値となるが,免疫グロブリン軽鎖のみを産生するベンスジョーンズ型やM蛋白を分泌しない非分泌型の場合は血清総蛋白が低値となり,注意を要する。骨髄検査で単クローン性形質細胞の10%以上の増加を認めた場合に診断が確定する。血清アルブミンやβ2ミクログロブリン,LDH,染色体異常〔t(4;14),t(14;16),del(17 p)〕は予後因子として重要である。骨病変や腫瘤性病変の診断には,CT,MRI,PETなどの画像検査を活用する。
骨髄腫細胞に対する抗腫瘍療法とともに合併症に対する支持療法が重要となる。新規薬剤の中でプロテアソーム阻害薬と免疫調節薬がキードラッグであり,両者の併用が望ましい。70歳未満で全身状態の良好な例には自家移植が可能であり,寛解導入療法としてプロテアソーム阻害薬を含む3剤療法を3~4サイクル施行した後に自家末梢血幹細胞移植を行い,その後は維持療法を継続する。一方,移植非適応例では,免疫調節薬やプロテアソーム阻害薬による2剤療法で開始するが,効果が不十分な場合は薬剤を変更するか3剤療法に強化してもよい。再発難治例においては,前回の治療で深い奏効が得られ再発までの期間が6カ月以上であれば,同じ治療を試みるか前回と異なる種類の次世代薬に変更する。
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