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ベーチェット病[私の治療]

No.4981 (2019年10月12日発行) P.48

池田 啓 (千葉大学医学部アレルギー・膠原病内科講師)

登録日: 2019-10-11

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  • 原因不明の炎症性疾患であり,反復性の口腔粘膜アフタ性潰瘍のほか,外陰部潰瘍,皮膚症状,関節病変,眼病変,消化管病変,神経病変,血管病変,副睾丸炎等をきたす。

    ▶診断のポイント

    それぞれの臨床徴候は必ずしもベーチェット病に特異的ではなく,診断に有用な自己抗体はない。炎症性発作を繰り返す病歴,比較的特徴的な所見(前房蓄膿など)の存在,ならびに他疾患の鑑別が重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療の目標は,炎症性発作を速やかに消退させ,その再発を予防することにより非可逆的な臓器障害を防ぐことである。生活指導として疲労/ストレスの回避が挙げられるが,しばしば何らかの薬物治療を要する。ベーチェット病の病態は多様であり,各診療科と連携し,それぞれの病態/臓器病変に対して治療戦略を立てる必要がある。軽症の口腔粘膜アフタ,毛囊炎,外陰部潰瘍は,しばしば外用薬で治療する。単関節炎,片側の眼病変には,しばしば副腎皮質ステロイド局所注射を選択するが,全身治療の併用を要する場合が多い。重症あるいは緊急性を要する病態には,ステロイドパルス療法を含む全身ステロイド投与が必要となるが,免疫抑制薬などを併用し,全身ステロイドは極力短期間,最低限の投与にとどめる。

    コルヒチンはベーチェット病の多くの病態に有効と考えられ,多くの症例,特に皮膚粘膜病変,関節病変の治療/再発予防に用いる。近年,ベーチェット病の複数の病態に対する腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)阻害薬の有効性が示され,既存薬の効果不十分/不耐例および重症例に積極的に投与している。特にインフリキシマブおよびアダリムマブは,わが国においてベーチェット病の多彩な病変に適応を有しているため,使用しやすい。そのほかの免疫抑制薬は,主に再発性/難治性病態に使用される。アザチオプリンは主に皮膚粘膜病変,眼病変,静脈血栓,消化管病変,神経病変,関節病変に,シクロスポリンは主に眼病変,静脈血栓に,シクロホスファミドは主に血管病変,神経病変に,メサラジンは消化管病変に,メトトレキサートは関節病変に用いる。神経病変に対してシクロスポリンは使用しない(増悪のリスクあり)。

    静脈血栓症の治療では,通常の場合と同様に抗凝固薬が用いられるが,発症の予防は免疫抑制治療が中心となる。

    重症消化管病変,出血を伴う血管病変,破裂のリスクを伴う動脈瘤,虚血症状を伴う動脈狭窄などに対しては,外科的治療や血管内治療を検討する。

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