脂肪組織が増殖することによって生じる良性の軟部腫瘍である。成熟した脂肪細胞で構成されるが,正常の脂肪組織と比べて,脂肪小葉が大きい。発生頻度の正確な報告はないが,軟部良性腫瘍の中で最も頻度が高い1)。皮下組織に存在する浅在性脂肪腫が多いが,筋膜下,筋肉内,筋間に存在することもある(深在性脂肪腫)。好発年齢は40~60歳でやや男性に多い2)。好発部位は頸部,肩甲部,背部,上腕,臀部,大腿部である。
自覚症状が少なく,弾性軟の軟部腫瘍である。
通常は単発が多いが,5~8%は多発例である。
発生頻度の高い皮下組織に存在する場合は,下床と可動性が良好である。
臨床症状に加えて超音波検査,CT検査,MRI検査が診断の手がかりとなる。
超音波検査:全体的に境界明瞭で脂肪組織と同程度の輝度であるが,腫瘍内の線維成分を反映し内部に細線維状の高輝度信号がみられる。
MRI画像:T1強調画像とT2強調画像で高信号となり,脂肪抑制画像では低信号となる(図)。
標準治療は外科的摘出である。取り切れれば再発は少ない。
小型の病変で悪性を強く疑わないものは経過観察とすることもある。その場合は増大の有無や症状をフォローアップする。深部病変の場合は画像検査で大きさを確認する。
自覚症状が少ないので,実際には整容面から切除されることが多い。大きい脂肪腫の場合は日常生活に支障をきたすこともあるので,摘出が必要となる。
術前に,画像検査で皮下組織に存在しているのか,筋膜下,筋肉内,筋間に存在しているのかをあらかじめ確認しておく。後頸部は深在性の頻度が高い。
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