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家族性高コレステロール血症(FH)の診断のコツ

No.4981 (2019年10月12日発行) P.58

和田 淳 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学教授)

斯波真理子 (国立循環器病研究センター研究所病態代謝部部長)

登録日: 2019-10-10

最終更新日: 2019-10-08

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  • 家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)の診断のコツを教えて下さい。FHの原因遺伝子が解明されてきており,治療法も進歩しています。しかし多くの患者が診断されずにいると思います。クリニックでの問診や診察のコツ,さらには遺伝子診断の進歩について国立循環器病研究センター研究所・斯波真理子先生に伺いたいと思います。

    【質問者】

    和田 淳 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学教授


    【回答】

    【高LDL-C血症を診たら必ずFHを疑い,身体所見,家族歴を聴取する】

    FHは,高LDLコレステロール(low density lipoprotein cholesterol:LDL-C)血症,皮膚および腱黄色腫,若年性動脈硬化症による,冠動脈疾患を3主徴とする遺伝病で,ヘテロ接合体は200~500人に1人の頻度でみられます。原因遺伝子は,LDL受容体,PCSK9機能獲得型変異などが知られています。成人(15歳以上)FHは,①LDL-C値が180mg/dL以上,②皮膚および腱黄色腫,③2親等以内の家族のFHあるいは早発性冠動脈疾患,のうち2項目が当てはまることで診断されます。

    診断基準の中で,①のLDL-C値は,180mg/dL以上が基本ですが,180mg/dL未満の例も数%程度存在します。②の腱黄色腫,特にアキレス腱肥厚を有する例は全体の60%程度であり,特に若年齢では,アキレス腱肥厚を認めない例が多いです。X線撮影装置がない場合,正確なアキレス腱肥厚の診断が困難です。③の家族歴は,近年,スタチンを服用下の患者においては,冠動脈疾患発症が必ずしも若年齢ではなくなってきています。したがって,診断基準を必ずしも満たさない例もあることを念頭に置く必要があります。

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