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国内の男性同性愛者におけるA型肝炎の流行とその対策は?

No.4980 (2019年10月05日発行) P.54

保科斉生 (東京慈恵会医科大学感染制御科)

井戸田一朗 (しらかば診療所院長)

登録日: 2019-10-06

最終更新日: 2019-10-01

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  • 近年の国内の男性同性愛者におけるA型肝炎の流行と,その対策についてご教示下さい。しらかば診療所・井戸田一朗先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    保科斉生 東京慈恵会医科大学感染制御科


    【回答】

    【ゲイ・バイセクシュアル男性(MSM)に対するA型肝炎ワクチンの接種の徹底が重要】

    A型肝炎は,ワクチンによる予防が可能な疾患であり,わが国における発生は,輸入例のほか,食中毒や施設における小規模な集団発生が主体です。しかし,ゲイ・バイセクシュアル男性(men who have sex with men:MSM)においては性交渉で伝搬し,アウトブレイクが起こることがあります。

    わが国のMSMにおいて1998~99年にかけて本症が流行しましたが,2018年初頭より再び流行がみられています。A型肝炎の報告数は,通常年間100~300例程度で推移してきましたが,2018年第1~42週までに,822例が報告されました。東京都,神奈川県,大阪府といった都市部からの報告が中心で,男性が91%,MSMが364例でした。

    吉村らの報告によれば,2018年1~5月の間に,横浜市に報告された17例のA型肝炎患者のうち,15例がMSM〔11例がヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)陽性〕でした。8例における血清もしくは糞便中のポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法による解析では,全例がジェノタイプⅠA,シーケンス型はRIVM-HAV16-090でした。本株は,2015~16年に台湾のMSM間で流行し,2016~17年にオランダでユーロ・プライドというゲイ・イベントに関連して流行した株です。特にHIV陽性MSMは,本症の罹患リスクが高いと考えてよいでしょう。

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