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急性腎障害(AKI)[私の治療]

No.4979 (2019年09月28日発行) P.50

土井研人 (東京大学医学部救急科学准教授)

登録日: 2019-09-29

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  • 急性腎障害(acute kidney injury:AKI)は急激な腎機能低下を呈する症候群であり,その原因となる病態は様々である。臨床的には腎前性,腎性,腎後性に分類することで治療戦略が明確となることが多い。

    ▶診断のポイント

    血清クレアチニンと尿量を基準とした診断基準であるKidney Disease Improving Global Outcome(KDIGO)基準が広く用いられており,わが国における診療ガイドラインにおいても用いることが推奨されている1)。以下の3つのうち少なくとも1つを満たせばAKIと診断できる。

    ①血清クレアチニン濃度の0.3mg/dL以上の上昇(48時間以内)
    ②血清クレアチニン濃度が基礎値から1.5倍以上に上昇(1週間以内)
    ③尿量0.5mL/kg/時以下が6時間以上持続

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    AKIの原因を腎前性,腎性,腎後性という分類から鑑別するようにアプローチする。

    尿路閉塞による腎後性AKIであれば閉塞機転の解除が最も有効かつ迅速に治療効果が得られることから,超音波あるいはCT検査にて腎の形態異常の有無を確認する。必要に応じて,尿道カテーテル,膀胱瘻,尿管ステント,腎瘻などの泌尿器科的処置を行う。

    腎灌流圧低下による腎前性AKIは腎臓の組織学的構築が保たれており,補液や昇圧薬投与などにより適切な灌流圧を維持すると,直ちに尿量が回復し血清クレアチニンも低下する。そのため,輸液反応性AKIと呼ばれることもある。

    一方,腎性AKIは腎構成単位であるネフロンのうち,糸球体あるいは尿細管に障害が生じ,灌流圧が保たれていても低下した腎機能が回復しない病態である。急性糸球体腎炎や抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)関連腎炎では糸球体障害が,造影剤や抗菌薬などの薬剤性腎障害,敗血症などでは尿細管障害が主体となる。これらは輸液不応性AKIとも呼ばれ,過剰な輸液はむしろ心不全や肺水腫など他の臓器障害を惹起する危険性がある。

    腎前性と腎性の鑑別には尿中Na排泄分画(fractional excretion of sodium:FENa)や尿沈渣が参考となる。

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