株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

小児肝腫瘍治療の現況について

No.4979 (2019年09月28日発行) P.60

三浦文彦 (帝京大学医学部外科准教授)

菱木知郎 (国立成育医療研究センター小児がんセンター腫瘍外科診療部部長/国立がん研究センター中央病院小児腫瘍外科(併任))

登録日: 2019-10-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • No.4963では,肝胆膵領域手術の施設集約化について述べさせていただきました。おそらく肝胆膵領域手術の施設集約化が最も進んでいるのは小児外科領域だと思います。そこで,小児肝腫瘍治療の現況について,国立成育医療研究センター/国立がん研究センター中央病院(併任)の菱木知郎先生にお聞きしたいと思います。

    【質問者】

    三浦文彦 帝京大学医学部外科准教授


    【回答】

    【大規模国際共同臨床試験の成果が実を結ぶときが近づいている】

    わが国では年間に2000~2500人の子どもが小児がんと診断されます。小児がんは過去には不治の病と考えられていましたが,化学療法や放射線療法の感受性がきわめて高いものが多く,これらと手術を組み合わせた集学的治療の進歩により,現在では70~80%が治るようになってきました。

    小児期に発生する肝腫瘍で最も多いのが,胎児性腫瘍である肝芽腫(hepatoblastoma)です。学童期以降の年長児では,肝細胞癌や肝未分化肉腫が比較的多くなります。以下,主に肝芽腫の治療の現況について概略します。

    肝芽腫は1970年代までは手術が唯一の治療手段であり,3年生存率は30%にしかすぎませんでしたが,術前・術後化学療法が導入されてから治療成績は飛躍的に向上し,近年では3年無病生存率は80%を超えています。特に過去には切除不能例や初発時遠隔転移を伴う症例の救命はきわめて困難でしたが,化学療法の強化や,切除不能例に対する全肝摘出・肝移植の導入により,進行症例であっても70%以上の患児に長期生存が見込まれる時代になりました。

    残り869文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top