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完全房室ブロック[私の治療]

No.4977 (2019年09月14日発行) P.58

村川裕二 (帝京大学医学部附属溝口病院第四内科教授)

登録日: 2019-09-11

最終更新日: 2019-09-10

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  • 房室ブロックのうち心房興奮と心室興奮が乖離しているとき,完全房室ブロックと呼ぶ。先天性完全房室ブロックの未治療成人例に頻度は低いが,心房の遠位部の心筋が脂肪組織と結合織に置き換えられ,房室結節との連絡が途絶している型が多い。一過性に完全房室ブロックが生じて,失神を認めることもある。一過性の完全房室ブロックには器質的な病態と機能的な病態のいずれもある。完全房室ブロックは体内式ペースメーカで治療が達成されるため,病因の探索は不十分に終わりやすい。しかし,サルコイドーシスなど治療により改善しうる背景疾患については留意したい。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    房室ブロックの解剖学的位置により補充調律の心拍数は異なる。上位のブロックでは心拍数は40/分前後に維持される。下位ブロックでは補充収縮の頻度が低く致死的となりやすい。しばしば失神を経験する。

    【検査所見】

    ホルター心電図など非侵襲的な検査では,発作性の完全房室ブロックを検出することは時に困難である。電気生理学的検査や植込み型ループ心電計が時に有用である。アダムス・ストークス症候群を疑うとき,高度房室ブロックへの進展が予測される心電図所見に留意する。完全右脚ブロックと左軸偏位の組み合わせは二束ブロックを疑う。さらにPQ時間の延長を伴えば,三束ブロックの可能性がある。

    房室伝導が途絶していないときでも,接合部など下位のレートが洞結節レートを上回れば,心房と心室とが独立して興奮収縮を起こす。この房室解離と呼ばれる現象は高度房室ブロックや完全房室ブロックと誤認されることがあるが,良性の所見である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療は体内式ペースメーカの植込みが原則となる。

    完全房室ブロックあるいは高度房室ブロックには,基礎疾患や他の不整脈と合併する特殊なタイプがある。

    【急性心筋梗塞の房室ブロック】

    下壁梗塞の完全房室ブロックには迷走神経の関与が知られている。しかし,発症後24時間以内の房室ブロックはアトロピンで解消しやすいが,24時間以降のブロックはアトロピンの効果は乏しい。アトロピン抵抗性の下壁梗塞の房室ブロックは梗塞領域が広い。

    【心房細動における房室ブロック】

    房室伝導が正常なら心房細動中の心室レートは高くなりやすい。もし無治療の心房細動患者に自覚症状や血行動態的に負担のない心室レートを認めたら,房室伝導能が低下していることが考えられる。心室周期が一定になれば,完全房室ブロックが疑われる。進行性の心機能低下やめまいの原因になる。β遮断薬などの休薬やペースメーカが考慮される。

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