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患者が教科書─乾坤一擲の手術から学んだこと[プラタナス]

No.4974 (2019年08月24日発行) P.3

鈴木健司 (順天堂大学呼吸器外科学講座教授)

登録日: 2019-08-24

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  • もう8年前のことになろうか。外来に60代後半の男性が紹介されてきた。巨大な腫瘍が右の肺門部を占拠している。その患者は既に血痰の症状を呈していて、気管支鏡では右主気管支に血液の貯留が認められた。写真にみられるように腫瘍は気管分岐部に明らかに浸潤していて、同時に上大静脈にまで至っている。右主肺動脈は腫瘍によって嘴状に狭小化している。このままでは早晩喀血により命を落とすであろうことは明白であった。

    臨床病期はstageⅢBであり、進行度からいえば手術は適応にならない。一方で最強の非手術療法である化学放射線療法を行うことも不可能であった。腫瘍の内部は壊死を起こし、炎症が強く、そして同時に閉塞性肺炎を起こしているからである。物理的に腫瘍を摘除するとすれば、右肺全摘術は必至である。その上、上大静脈の合併切除と再建が余儀なくされる。

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