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手足口病[私の治療]

No.4974 (2019年08月24日発行) P.51

木原亜古 (きはら内科あこ小児科副院長)

登録日: 2019-08-21

最終更新日: 2019-08-20

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  • 手足口病(hand–foot–and–mouth disease:HFMD)は,水疱性の発疹が口腔粘膜,手足を中心として現れる発疹性疾患である。原因ウイルスはコクサッキーウイルスA16(CA16),A6(CA6),A10(CA10),エンテロウイルス71(EV71)などが主であるが,コクサッキーウイルスBやエコーウイルスなども原因となる。感染症発生動向調査によると,国内における手足口病流行のピークは夏季であるが,秋から冬にかけても多少の発生がみられる。基本的に数日中に治癒する予後の良い疾患であるが,不顕性感染があり,流行的発生がみられるので注意を要する。また,近年EV71による手足口病には中枢神経系合併症を伴うものもあり,死亡例も報告されている。

    ▶診断のポイント

    通常のCA16およびEV71による手足口病では,3~5日の潜伏期をおいて口腔粘膜,手掌,足蹠などの四肢末端に2~3mmの水疱性発疹が出現する。時に肘,膝,臀部,稀に顔などにも出現することもある。口腔粘膜では小潰瘍を形成することもある。発熱は約1/3の症例にみられるが軽度であり,ほとんどは38℃以下が多い。発疹は通常3~7日の経過で消退し,水疱が痂皮を形成することはなく,色素沈着も残さない。近年のCA6によるものでは,従来のものとは発疹の出現部位が異なり,水疱はやや大きめで扁平,臍窩を認め1),発症後数週間して爪脱落が起こる症例(爪甲脱落症)が報告されている2)。鑑別の対象には,口腔内水疱についてはヘルパンギーナ,ヘルペスウイルスによる歯肉口内炎,アフタ性口内炎などが,手足の発疹に関しては水痘の初期疹,ストロフルス,伝染性軟属腫(みずいぼ)などがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    手足口病には特異的な治療法はなく,対症療法になる。発疹にかゆみを伴うことはあまりないが,稀にそういった症例には抗ヒスタミン薬の内服や塗布を行う。外用薬としての副腎皮質ステロイドで症状を悪化させることが示唆されているので,注意する。また,膿痂疹などの合併症が生じた場合以外,抗菌薬投与は必要ない。口腔内病変で痛みがある場合には,経口摂取を妨げないような柔らかめで薄味の食べ物を勧めるが,頻回に経口補液をして水分不足にならないようにすることが最も重要である。経口摂取がうまくいかないときには経静脈的補液も必要となる。

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