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外傷性鼓膜穿孔[私の治療]

No.4974 (2019年08月24日発行) P.50

白馬伸洋 (帝京大学医学部附属溝口病院耳鼻咽喉科教授)

登録日: 2019-08-21

最終更新日: 2019-08-20

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  • 外傷性鼓膜穿孔の原因としては,外耳道を経由して鼓膜に損傷を加える直接外力によるものと,外耳道と中耳腔の圧差や側頭骨骨折に起因する間接外力によるものとに大別される。直接外力としては耳搔きをはじめ,棒,割り箸,ストロー,マッチ棒などが多い。間接外力としては平手打ちやスポーツの殴打,野球ボールなどが外耳道を密封して当たったとき,また,爆風やマリンスポーツ時の急激な水圧などによって損傷が生じる。交通事故や転落などの側頭骨骨折時には骨折線の延長上に鼓膜穿孔が生じる。耳漏は細菌検査を実施し,原因菌の同定と抗菌薬感受性を調べることが重要である。また,外傷により耳小骨骨折や内耳障害を併発することもある。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    自覚症状ではほぼ全例に難聴を呈する。また,炎症が持続すると耳漏を呈する。アブミ骨より内耳に外力の影響が及べば耳閉感や耳鳴り,めまいを伴う。

    【検査所見】

    顕微鏡や内視鏡,ファイバースコープを用いた鼓膜の観察が重要である。出血により鼓膜の観察が困難な症例も多い。顕微鏡下に凝血塊を吸引・清掃し,穿孔の有無を観察する。鼓膜の穿孔部位であるが,急激な圧負荷による場合は前下象限に多いとされている。一方,外傷性鼓膜穿孔の陳旧例では鼓膜穿孔が閉鎖されている症例も多い。顕微鏡下に鼓膜を詳細に観察すれば鼓膜の陥凹やツチ骨の前方への偏位が観察される。純音聴力検査で60%が伝音性難聴を呈するが,内耳の障害により骨導も悪くなる。A-B gapは30dB以上を呈する。鼓膜穿孔がない耳小骨離断のテンパノメトリーでは,典型例ではAd型を示すが,離断の状態によってはA型を示す症例もある。単純X線写真では側頭骨骨折の延長上に耳小骨があるとき,診断の参考となる。側頭骨CTは耳小骨の状態の診断に有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    鼓膜穿孔の新鮮例に対しては,感染さえなければ自然閉鎖が期待される。外耳道を丁寧に清掃し,感染がなければ抗菌薬の点耳も必要ない。1カ月過ぎた症例では,閉鎖を促すためにキチン膜などの人工膜をパッチとして充てることが有用である。3カ月を過ぎて保存的治療では自然閉鎖しない症例では,鼓膜閉鎖を目的とした手術法を選択する。

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