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マイコプラズマ肺炎[私の治療]

No.4973 (2019年08月17日発行) P.49

宮下修行 (関西医科大学内科学第一講座呼吸器感染症・アレルギー科教授)

尾形 誠 (関西医科大学内科学第一講座呼吸器感染症・アレルギー科講師)

福田直樹 (関西医科大学内科学第一講座呼吸器感染症・アレルギー科)

登録日: 2019-08-16

最終更新日: 2019-08-13

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  • マイコプラズマは小集団内で流行を起こすことが特徴のひとつで,成人市中肺炎の原因菌としては肺炎球菌,インフルエンザ菌についで多い微生物である。一方,医療・介護関連肺炎や院内肺炎への関与は低い。本菌による肺炎は軽症であることが多く,入院を必要としない場合が多いため“walking pneumonia”と呼称されている。臨床上問題となるのがマクロライド系抗菌薬に対する耐性株の存在で,2000年以降にわが国の各地で分離されるようになり,以後増加したが2012年をピークに減少してきている。

    ▶診断のポイント

    マイコプラズマは細菌と比較して感染様式や炎症の本体の違いに加え,気道上皮細胞への親和性が異なり,このことが臨床像の違いとして現れる。たとえば,感染感受性は若年者層に偏っており,若年者の多くは基礎疾患(慢性の心肺疾患など)を保有していない。マイコプラズマの感染の主座は,病初期は気管支~細気管支領域であるため,聴診では副雑音を聴取しにくい。咳嗽はほとんどの症例でみられ頑固で,しばしば夜間の睡眠が妨げられる。また,免疫反応が主体であるため,細菌性肺炎とは異なり白血球数が上昇する症例が少ない。これらマイコプラズマ肺炎の特徴を勘案して,市中肺炎ガイドラインは臨床像から非定型肺炎(主にマイコプラズマ肺炎)を抽出する項目を作成し推奨している。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療に際し押さえておくべきことは,セフェム系抗菌薬などのβ-ラクタム系抗菌薬が標的とする細胞壁をマイコプラズマ属は有さないため,抗マイコプラズマ活性を示さない,ということである。マイコプラズマの増殖抑制を強く示す薬剤にはテトラサイクリン系抗菌薬,マクロライド系抗菌薬,ニューキノロン系抗菌薬などがあり,臨床的にも有効である。

    マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎に対する各種抗菌薬の臨床効果は,in vitro抗菌活性をよく反映し,マクロライド系抗菌薬はミノサイクリンやニューキノロン系抗菌薬と比較し有意に劣っている。ただし,マクロライド系抗菌薬治療群では有熱期間や咳などの臨床症状が長引くものの,最終的には治癒している。ただし,マイコプラズマ病変の多くが宿主の免疫反応であることを考えると,殺菌効果が弱くても宿主免疫反応を抑制することにより肺炎を改善する方向に導くと考えられるため,日本マイコプラズマ学会ではマクロライド系抗菌薬を第一選択薬に推奨している。

    マクロライド系抗菌薬の効果が乏しい場合(投与後48~72時間で解熱しない場合)は,マクロライド耐性マイコプラズマ感染症を疑い,テトラサイクリン系抗菌薬,ニューキノロン系抗菌薬に変更することを推奨している。

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