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心ファブリー病[私の治療]

No.4973 (2019年08月17日発行) P.46

豊田 茂 (獨協医科大学内科学(心臓・血管/循環器)准教授)

登録日: 2019-08-19

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  • ファブリー病はX連鎖遺伝形式の先天性糖脂質代謝異常症であり,ライソゾーム内酸性加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A:GLA)の欠損あるいは活性低下により,グロボトリアオシルセラミド(globotriaosylceramide:Gb3)などの糖脂質が組織細胞内に蓄積し,心臓や腎臓など全身の臓器が障害を受け,様々な臨床症状が発現する。
    ファブリー病の臨床病型は,男性患者ではかつては古典型,心亜型,腎亜型と分類されていたが,現在では心亜型と腎亜型を合わせて遅発型と分類することが一般的である。古典型ファブリー病ではGLA残存酵素活性が1%未満であり,幼児期・学童期より四肢末端痛や発汗障害を初発症状とし,その後徐々に多臓器障害を認めるのに対し,遅発型の心亜型ではGLA残存酵素活性が10%未満であり,典型的な四肢末端痛や発汗障害などを認めず,心肥大を主とする心障害のみを呈する。女性ヘテロ型患者では,GLA残存酵素活性の有無だけではなく,X染色体の無作為な不活化のためその臨床像の形成に大きな影響を与え,心肥大を呈するものから末期腎不全に至るものまで様々だが,男性に比べると臓器障害の進行は遅い傾向がある。

    ▶診断のポイント

    ファブリー病の診断において,特異的な臨床症状や家族歴よりファブリー病が疑われれば,男性ではGLA酵素活性で診断が可能であるが,酵素活性が正常の30~70%程度に低下するが臨床症状を発症しない機能的多型(p.E66Q変異など)に注意する必要がある。女性ではGLA酵素活性だけでは診断ができず遺伝子解析を行い病的変異が見つかれば確定診断となるが,遺伝子解析を行っても約5%は病的変異が検出されない。この場合には尿中Gb3の蓄積や血漿グロボトリアオシルスフィンゴシン(Lyso Gb3)増加の確認,心臓・腎臓などの組織生検から蓄積を証明するなど,総合的に診断する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    心ファブリー病に対する治療方針は,加齢とともにGb3が蓄積し臓器障害が進行することから,早期診断・早期治療が重要である。2004年からわが国でも根本的治療である酵素補充療法(enzyme replacement therapy:ERT)が可能となった。ERTはGLAを2週間に1回経静脈的に投与する治療法で,GLAはマンノース-6-リン酸受容体を介して細胞内そしてライソゾーム内に取り込まれ,蓄積したGb3を分解する。ファブリー病心病変に対するERTは,心筋の線維化が起こる前に開始することが心臓の形態・機能・運動耐容能の点からも推奨されている。現在,わが国で使用できるERTとして,アガルシダーゼ アルファ(リプレガル®),アガルシダーゼ ベータ(ファブラザイム®),そしてアガルシダーゼ ベータのバイオシミラー(JCR)がある。また,2018年から薬理学的シャペロン療法である経口治療薬ミガーラスタット(ガラフォルド®)が使用可能となった。ただし,本剤に対するGLA遺伝子変異の反応性が確認されている場合のみ使用が可能である。

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