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進行性核上性麻痺[私の治療]

No.4969 (2019年07月20日発行) P.46

下畑享良 (岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野教授)

登録日: 2019-07-21

最終更新日: 2019-07-16

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  • 異常にリン酸化されたタウ(4リピートタウ)の蓄積により発症するタウオパチーのひとつである。

    ▶診断のポイント

    古典的な疾患概念としての進行性核上性麻痺(progressive supranuclea palsy:PSP)は,現在,Richardson症候群(RS)と呼ばれ,National Institute of Neurological Disorders and Stroke and Society for PSP(NINDS-SPSP)基準により診断する1)。厚生労働省の診断基準では,①40歳以降で発症することが多く,緩徐進行性である,を満たし,②主要症候として,1)垂直性核上性眼球運動障害(初期には垂直性衝動性眼球運動の緩徐化であるが,進行するにつれ上下方向への注視麻痺が顕著になってくる),2)発症早期(おおむね1~2年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足,立直り反射障害,突進現象)が目立つ,3)無動あるいは筋強剛があり,四肢末梢よりも体幹部や頸部に目立つ,のうち2項目以上を認め,さらに他の疾患を除外できる場合に診断できる,とされている。

    臨床的にRSを呈しながら,病理学的にPSPではない症例はPSP mimicsと呼ばれるが,内訳として大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration:CBD)が多いことが知られている。
    代表的な画像所見として以下がある。

    ①頭部MRIにおける中脳被蓋の萎縮(矢状断でのハミングバード・サイン)
    123I-FP-CIT SPECT(ダットスキャン®)における線条体での集積低下
    ③MIBG心筋シンチグラフィにおける集積低下なし

    2017年に新しい診断基準MDS PSP diagnostic criteriaが提唱され,PSPの特徴的な臨床症状として,4つの中核となる機能ドメイン〔眼球運動機能異常(O),姿勢保持障害(P),無動(A),認知機能障害(C)〕が提案され,それぞれLevel 1〜3の3段階に分類された2)。この中で,病理学的にPSPであるものの,RS以外の表現型を呈する異型PSP症候群が7種類提唱された。病初期にはほぼパーキンソン病様症状を呈しレボドパにも反応するものの,進行すると典型的なPSP症状を呈するPSP-P(PSP-parkinsonism)や,筋強剛が目立たず,すくみ足が主体のPSP-PGF(PSP-progressive gait freezing)などがある。

    この診断基準には含まれなかったが,わが国では小脳性運動失調を主徴とするPSP-C(PSP-cerebellar ataxia)が存在する。

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