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腎梗塞[私の治療]

No.4969 (2019年07月20日発行) P.45

高市憲明 (虎の門病院腎センター内科部長・副院長)

登録日: 2019-07-22

最終更新日: 2019-07-16

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  • 腎梗塞は腎動脈もしくはその分枝動脈が閉塞することにより末梢側に梗塞が生じる病態である。閉塞の原因としては心房細動による心房内血栓や大動脈・腎動脈由来の血栓により塞栓が生じることが多い。そのほかには過凝固状態,Marfan症候群,Ehlers-Danlos症候群,fibromuscular dysplasiaなどとの合併も報告されているが,30%程度は原因が必ずしも同定されていない。上記のうち,心房細動が原因になることが最も多いと考えられている。しかし,実際に腎梗塞と診断される頻度は稀である。

    ▶診断のポイント

    症状としては急性発症の側腹痛ないし側背部痛が生じることが多く,吐き気・発熱などを伴うこともある。検査所見としては30%程度の患者に顕微鏡的血尿を認める。より頻度は低いが蛋白尿を認めることもある。逸脱酵素であるLDHの上昇を認めることもある。アミノトランスフェラーゼの上昇に比し,LDHの上昇が目立つ場合は腎梗塞の可能性を念頭に置く必要がある。白血球数やCRPの上昇などの炎症所見を認めることもある。レニン分泌増多によると思われる高血圧を呈することもある。もともとの腎機能の予備能が低く,両側性の腎梗塞のように広範な腎梗塞が生じた場合には,Cr上昇等の腎機能低下を認めることもある。

    上記の症状,検査所見は腎梗塞に特異的ではなく,また,腎梗塞の頻度は低いため,同様の症状や検査所見を示す可能性があり,より頻度が高い腎尿路結石や,腎盂腎炎などの鑑別が重要になる。

    理学所見,一般的血液尿検査で腎梗塞の可能性が疑われる場合は,腹部エコー検査,腹部CT検査などで腎・尿路結石を除外する。確定造影のためには,造影CT検査・造影MRI・放射性物質を用いた腎の血流シンチなどでくさび型の造影欠損を証明する。ただし,腎機能が低下している場合には,ヨード含有造影剤による腎障害・ガドリニウムによる腎性全身性線維症を生じることがありうるので,適応を的確に判断する必要がある。

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