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血栓性微小血管症(TMA)[私の治療]

No.4968 (2019年07月13日発行) P.47

山縣邦弘 (筑波大学医学医療系腎臓内科学教授)

登録日: 2019-07-15

最終更新日: 2019-07-09

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  • 血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)は主として腎臓の細小血管の障害による疾患で,血管内の微小塞栓と溶血を伴う。病変の主座は終末細動脈から毛細血管の内皮細胞である。TMAの病変部では血小板とヒアリンの塞栓による閉塞病変をきたす。本症では微小血管性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia:MAHA)と,血小板減少,細血管内血小板血栓を示し,腎機能障害と精神症状が臨床的に問題となる。腎では血管病変とともに,膜性増殖性糸球体腎炎様の糸球体病変を示す。TMAの病態を示す疾患として血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)と溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)が有名であるが,本病態は悪性高血圧症,強皮症腎クリーゼ,抗リン脂質抗体症候群,妊娠高血圧性腎症(preeclampsia/HELLP症候群)でもみられる。

    ▶診断のポイント

    TTPは血小板減少,溶血性貧血,腎機能障害,発熱,動揺性精神神経障害を主徴とし,HUSでは血小板減少,溶血性貧血,急性腎不全が主徴とされる。従来HUSとTTPは臨床病型と好発年齢(TTPが成人から高齢者,HUSが小児期)の違いにより区分されてきた。しかしながら,atypical HUSのように成人で発症するHUSが注目され,さらにHUSにも神経系の症候をしばしば併発することが明らかとなり,従来の臨床病型での鑑別は適さなくなってきており,近年では,両疾患の病因により分類され,さらに治療法も病態生理に応じたものになっている。

    臨床症状では血小板減少による紫斑,消化管出血を含む出血傾向,溶血による貧血およびLDH高値,血清ハプトグロビンの著減,末梢血塗抹標本の破砕赤血球の出現,増加を認める。神経症状として,意識障害,痙攣,頭痛,出血性脳梗塞などをきたす。同時に血蛋白尿から,しばしば急性腎障害を発症する。

    HUSはその90%以上が腸管出血性大腸菌感染後に発症する。典型例では下痢,鮮血便とともに乏尿,浮腫,血蛋白尿,急性腎障害を認め,出血斑,血小板減少,溶血性貧血を呈する。さらに頭痛,傾眠,不穏,痙攣などの中枢神経症状を認める。また,TTPは先天性(Upshaw-Schulman症候群)と後天性に分類される。通常,血小板減少と溶血性貧血を認め,ADAM TS13活性の低下で確定診断される。

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